経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.18】
 
 新しい時代の警備をつくる
 
         見過ごさない、という誠実さを求めて
 
協和警備保障 株式会社
     齋藤社長に聞く
 
 ついこの間まで「日本だけは安全だ」と考えていた私たちを取り巻く環境は、今、大きく様変わりしています。治安の悪化、社会の多様化にともない、様々な警備システムが意外なほど身近なところで活躍する中、創業以来、右肩上がりの業績を誇る協和警備保障株式会社の齋藤社長にお話を伺いました。
 
‥‥‥創業当初のことを教えて下さい。
 昭和49年5月、ここから少し先の緑町で創業しました。その後、昭和60年に、ここ汐見丘へ移りました。
 私は大学を出てからずっとサラリーマンとして、総務や人事の仕事に携わっていました。そして大手警備保障会社勤務を経て、創業に至ったわけですが、当時は、とにかく営業に苦心しましたね。それまで人事関係しか経験がなく、お客様のところをまわってお仕事をいただくことに関してはド素人でしたから、大変でした。その難しさは、今でも変わっていません。やはり常にお客様を開拓していくという課題は、どんな業種でも一番苦労する点だと思います。
 創業当初は、サラリーマン時代や学生時代に遡って、かつて築いた人間関係から仕事が広がっていき、現在に至っていますが、自分は営業に向いていないなと悩んだこともありました。当時、たまたまご縁があった千葉大学の先生が、心理学の権威でいらして、いろいろなアドバイスをいただいたものです。営業もしかりですが、よい人材を得るにはどうしたらよいのか、随分勉強させてもらいました。
 もっとも、その先生いわく、心理学はあくまでもひとつの学問であって、しかも人の命に関わるものではない。つまり、万が一間違ってもそれほど困らないという甘さがあるわけです。ですから、心理学的に様々なデータをもとにして相手を分析しつつも、自分がそれまでの人生で培ってきた勘を優先する必要がありますね。やはり、一番信用できるのは自分自身の"目"です。社員採用の適性検査の際にも、心理学的にはこういう傾向があるようだけれども、という判断基準のひとつとして上手に利用し、最後はやはり人の"目"を決め手にしています。
 もちろん、私の勘も外れる場合がありますが、サラリーマン時代に1000人以上の人事を担当していた実績がありますから、今後もそれを大事にしていきたいと思っています。

‥‥‥治安の悪化が叫ばれる今、どういった展望をお持ちですか。
 警備の仕事が増える、というと、危険な世の中になっていくという悪いイメージがあって、本来は私どもの業種が儲からない方がよい社会なのかもしれませんが(笑)、これだけ複雑な社会システムを維持するためには、今後、ますます多様な警備が必要とされるのは間違いありません。
 当社は日本全国、北は青森から南は福岡まで、また海外にも拠点を設けていますので、それぞれの地域のニーズに応えられるよう、努力を続けております。
 最近では、従来は警察が行なっていた業務が、私ども民間の警備会社に委託されるケースも増えています。例えば、千葉では他都道府県に先んじてスタートしている「地域安全パトロール」。凶悪な事件が増加しているために、警察は小さな事件にまで手がまわらなくなっています。私どもに許されているのは「発見・通報」、そして万引きなどに代表される現行犯の取り抑えまでですが、犯罪を未然に防ぐためにはこうした巡回警備が有効です。これは、空き巣などの被害が多かった地域において、現在、確実に効果が上がっているという報告があります。

‥‥‥とかく危険な現場、というイメージが先行してしまいますが。
 全てではありませんが、時にはそういった現場ももちろんあります。"警備"と言うと、ガードマンのような屈強な人間が活躍する現場をイメージされる方が多いようですが、実際には様々な施設内の警備システムを管理する機械警備、イベントなどの保安警備、店舗などの巡回警備、その派遣先も工場から金融機関、空港、学校などの公共施設、要人の自宅まで実にバラエティ豊かです。またグループ会社としてビル管理会社もやっていますから、ビルの清掃や受け付け業務、駐車場の窓口業務など、現場の仕事は多岐に渡ります。
 しかし世界的に見ても、アメリカの同時多発テロ以降、多分野におけるテロ対策に始まって、警備の裾野は広がる一方ですし、これまでには考えられなかった凶悪な事件への対処も必要になってきています。これまでにも、実際に当社が警備を担当して、危険な目にあった例はいくつもあります。成田から千葉港までのパイプラインを開設する際、過激派にガソリンをかけられた警備員もおりましたし、成田空港の公安関係者のご自宅を警護していて、その方が退職され、警備を解約された翌日に、そのご自宅が燃やされた事件もありました。また、ある要人のご自宅前を通った巡回車が、不振な段ボールを見つけて、念のため触らずに警察に通報したところ、それは爆弾だった、というようなことも…。そういった面では、常に命の危険と隣り合わせの現場も多いことは事実です。

‥‥‥警備という仕事に向いているのは、どんな人材なのでしょう。
 特に、スポーツや武道を経験していなければいけないということはありません。それよりも大切なことは、どんな業種においても言えることですが、まずは体が健康なことですね。例えそれが、安全を守る重要な現場においても、地道なビル清掃の作業であっても同じです。
 そして誠実であること。熱心に、真面目に仕事に取り組むことができなければ困ります。現場が大変なのはもちろんですが、その現場を管理する側の人間は特に、時間では計れない業務もありますし、警備の仕事というのは肉体労働と言うより知的労働なんです。
 決して、特殊な能力が必要な仕事ではないんです。むしろ保安という面で求められるのは、勇敢さや逞しさよりも、几帳面さですね。大雑把だったり、いい加減な性格の方では、難しいと思います。
 例えば、最近ワイドショーなどで取り上げられている万引き専門の巡回警備員。当社でも、数百名の社員が、女性を中心に私服で店舗を廻っています。たとえ女子トイレや下着売り場、化粧品売り場などでも、怪しまれずに入っていけるのはやはり女性ですから、男性では難しいと思います。そこで一番恐いのは「誤認」です。万引きのプロは、盗んだふりをして商品を店内に残し、警備員に捕まった時点で「じゃ、どこに品物があるんだ」としらを切ります。そうなると謝っただけで済むわけはなく、多額の"迷惑料"を請求されて、私どもは大人しく頭を下げに行かなければなりません。そういう悪質なプロが多いですから、警備する側は本当に慎重になりますし、細かい気配り・目配りが要求されます。

‥‥‥社員教育としては、どんな部分に力を入れていますか。
 社内では年2回の研修を実施し、また現場のリーダーには定期的にテストを行なって、社員全体の能力の向上をはかっています。それから社員の誕生月には、毎年、一筆添えてプレゼントを渡しています。品物は健康グッズだったり、現場で役に立つ文房具だったりです。
 ちなみに昨年の社内研修のテーマは「見せる警備をしよう」というものでした。今年のテーマは、「ものを盗るな、嘘をつくな、それを見過ごすな」という、アメリカの陸軍士官学校・ウェストポイントで使われている言葉を選んでいます。大切な命や、貴重品を守る立場にいる警備員は、まずどうしたら信用を得られるのかというのがキーポイントです。いかに信用を得、警備の質を向上させるか。それが会社全体のテーマと言ってもいいでしょう。

 
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