経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.19】
 
 製造業をソフトとマネジメントで変えて行く
 
        〜世界は技術という1本の路で繋がっている〜
 
株式会社 セイロジャパン
     大嶋社長に聞く
 
 近年、海外への流出そして国内の空洞化が憂慮される日本の製造業。しかし日本が世界に誇る優秀な技術力と、その底力を証明してくれる優良企業があります。『侍奉の精神』という信念を掲げ、これからの製造業をソフト面から導かんとする株式会社セイロジャパンの大嶋社長にお話を伺いました。
 
‥‥‥創業以来の事業の変遷をお聞きします。
 弊社は昭和56年に工作機械や産業機械の輸入販売会社として創業されました。その後、販売の拠点を東南アジアにも展開し、現地法人を設立してきました。コンピュータ技術の発展に伴い工作機械のNC化が促進されましたが、弊社でも、最先端のNC工作機械を販売すると同時に、CAD/CAMシステムを取り扱うようになりました。
 工作機械の販売というのは、売上がかさむ割には利益率が非常に低いのです。今から12〜13年前にイスラエル製のCAD/CAMシステムを扱い始めたのが転機になり、以降欧米の海外製ソフトの日本代理店という業態にシフトしていき、現在ではこの分野の利益が全体の90%を占めるようになりました。CAD/CAMシステムとは、基本的にはこのようなNC工作機械の加工プログラムを自動作成するソフトで、自動車やオートバイの躯体といった大きな製品をプレスする金型や、自動車用や家電用のプラスティック製品の金型の製造に不可欠なソフトです。主な取引先は、自動車部品、家電部品メーカーの製造部や金型の製作会社などです。金型会社はこのソフトを使ってコンピュータ上で金型を3次元設計し、様々なメーカーからの注文通りに加工できるところまで仕上げ、製品化し、納品するわけです。
 会社としては機械事業部を分社化することで業務の集中化を図ることができました。

‥‥‥金型を作るソフトとは、どういうものなのですか。
 今までは作った図面も製図板で書いた2次元の図面でしたが、CAD/CAMシステムでは実際の3次元モデルをコンピュータ内に作成し(3次元CAD)、CAMモジュールでNC工作機械用の加工プログラムを自動生成させ、実際に金型製造を行います。
 今までは熟練工が調整しながら手作業で作っていたものを、今はコンピュータ上で、しかも10万分の1ミリといった精密さで作ることができます。
 更に、自動車をはじめ全ての工業製品の市場ニーズが、角張ったデザインから丸みを帯びたフォルムに変遷してきましたが、従来3次元の自由曲面加工は非常に困難でした。
 しかし、3次元CAD/CAMシステムを使用すればどんなに複雑な自由曲面も、精密に早く美しく製造できるようになったわけです。
 この加工技術は日本が最高なんです。意外と知られておりませんが、外車も本国でデザインされ、複雑な金型は日本に注文されることも多いんです。世界でも有名な金型メーカーは日本に多く、出荷額では世界のシェアの3〜4割を占めています。機械とソフトと加工技術のレベルが共に上がってきたことが日本の技術の優位性だと思います。

‥‥‥日本の製造業の今後はどうなっていくのでしょうか。
 ここ10年程、日本の製造業が空洞化し、中国や東南アジアなどの海外に依存するようになっていましたが、昨年の秋くらいから国内に仕事が戻ってきています。すでにマスコミも取り上げていますが、例えば、今中国に頼むと6ヶ月でできるものが、日本国内ならば3ヶ月で出来るんです。携帯電話でも何でも、とにかく新製品を次々に出したいが、海外に大量発注して入荷する頃には既に、他社の新商品が人気を集めているということも有り得るわけです。
 商品の流行は信じられないくらい回転が早くなりました。大量に安価商品を製造する時代は終焉を迎えました。そのかわり、質や機能性が高い良品を、いち早く作ることが特に重要になってきました。アジアに会社を出せば勝てるという考え方はもはや薄れ、過去の産物となりつつあります。国内で社内を整備し、社員を教育して競争力を持った方が賢明という訳です。日本の生産競争力は、これからまだまだ上がっていくと思います。

‥‥‥今後、御社ではどういった分野が伸びて行くのでしょうか。
 金型市場に関しては、すでに成熱期を過ぎています。メーカー側は少ない金型で生産できるよう、多くの機種でも部品を全て共通化してしまう「モジュール化」に向かっていますので、逆に、金型を作るためのシミュレーション・ソフトの需要は増えています。
 設計のデータ通りに作ってみて数千万円の金型を誤って削ってしまい、失敗してからではコストと時間の無駄です。このような場合には解析ソフト(CAE)が非常に有効です。
 今後は、設計から加工に至る製造工程のマネジメントを行なう、プランニング・ソフトを伴う生産管理システムなど、全体的なソリューション・ケアが必要になっていくでしょう。製造業のIT化はまだまだ遅れていますから、この需要はますます高くなります。当社も、今後製造業の生産管理まで構築できるようなソフトを扱っていきたいと思います。
 さらに当社のデジタルソリューション部では、光センサーや液晶の検査装置といった、情報機器の開発も手掛けています。特に今、急速に伸びているのはセキュリティーを中心とした監視関連ですね。河川の水位、商店街の治安、廃棄物投棄から、地震や火山の噴火予知、無人の工場の機械監視までと、裾野は広がる一方だと思います。

‥‥‥社長はITコーディネーター、中小企業診断士という肩書きもお持ちですね。
 ITとはシステムや道具ではなく、経営メソッドではないかと考えます。私は機械技術系の学校を出てから、医薬品会社で製品開発の現場に長く携わってきました。初めて自分の会社を持ったのは33才の時です。以降、いくつか会社を起こし、コンサルティング業をやっていた時に出会った当社の前社長からお声がかかり、5代目杜長に就任したのが4年前です。もともと機械の方は専門でしたし、モノづくりは好きでした。どんな業界であってもマネジメントは同様です。マーケティングやITに強いことで、技術畑のエンジニアが不得意とする分野を私が補完できるのではないかと思っています。
 今年のテーマは「学習する組織」です。ここ幕張新都心は高度ポリテクセンターという職業訓練施設があって、技術習得のメッカです。本社を東京からここに移した理由のひとつでもあるのですが、情報や知識の入りやすい場所です。
 うちは社員ひとりひとりの付加価値をよく見極めてランキングをつけ、給料に反映させています。日本では馴染みにくいシステムかもしれませんが、彼らの業績によって、学習にかける費用も変えるんです。業績の上がった者には多くの投資を、という差別化です。やる気のある社員には会社はいくらでも投資する。何よりも"人"が財産ですから。

‥‥‥最後になりましたが、経営理念を教えて下さい。
 創業以来22年目ですが、こんな中小企業で何故、と思う程、大きな理念を持っています。『侍奉(じほう)の精神と技術を通して世界の国々の発展に貢献し、人類の平和と幸福と繁栄を実現します』というものです。侍とは"刀を持つ人"ではなく"人に尽くす"もの、つまり『侍奉』とは人に尽くすことに、さらに深い意味を持たせた言葉なんです。
 社名の「セイロ」は、正しい意志の路という意味の「正意路」並びに「世一路」が語源となっており、世界は陸・海・空、全てにおいて1本の路でつながっているという願いを表す夢のある言葉です。創業者の精神の中には『技術の平準化』という言葉があります。北半球と南半球の経済格差を、北で発展した技術で、南の"谷"を埋めていこう、日本の技術を積極的に提供しょうという考えです。
 それでは特許権はどうなるのかと思われるでしょうが、元を正せばアメリカ建国時、ジェファーソンの頃には、特許権は7年だの11年だのと規定されていました。 開発者だけの半永久的な利益があってはいけない、という考え方でしょう。それを50年、70年と引き伸ばしたのはディズニーです。特許の持ち主だけがいつまでも創業者利益をむさぼるのは、少しやり過ぎでは?というのが当社の考えです。せめて10年くらいで特許を開放していけば、もっと技術は世界的に平準化していくはずだと考えるのです。
 そんな信念を持った、志ある創業者の想いのもと、これからも歩んで行きたいと思います。

 
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