経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.24】
 
 中小企業から、異業種融合、そして世界へ
 
ロボットで、オンリーワンをめざして
 
株式会社ラインワークス
     田村社長に聞く
 
 ロボットメーカー。何だか私たちの夢の向こうの最先端業界のような先入観を持ってしまいますが、多くの中小企業が抱える悩みや、展望とともに着実に歩みを進めることに変わりはありません。株式会社ラインワークスの田村社長にお話をうかがいました。
 
‥‥‥現在の主力商品「LINEMAN」について教えて下さい。
 1トン ハンドリング ロボット「LINEMAN」は、私が理事長をつとめる融合化組合で開発いたしました。平成元年、それまでの異業種交流を越えて、異業種を融合させる「融合化法」ができました。千葉県では2番目に我々が認定され、現在まで続いています。県より援助をいただいて完成しました。「LINEMAN」は工程間を結ぶハンドリングロボットで同時に溶接のポジショナーとしての役目を併せ持つロボットです。当社のコンセプトは「工場の入口から出口までを全ておまかせ下さい」というもの。その「入口から出口」までの工程間の搬送に使います。受注の際は前後もろもろの設備が付加されますので大きい設備になると1億、2億になります。今年7月、大阪で開催された国際ウェルディングショーにも出展しました。世界中から80以上もの企業と、最先端のロボットやロボットのソフト、レーザー切断機などの最先端技術が集結し、「LINEMAN」もすでに何件か引き合いをいただいています。
 日本が国際競争力で勝つためのキーワード"無人化"です。人が多く介在してはとても国際競争に勝てない。無人化のためには工程をつなぎ、受け渡す役目を担うマシンが必要なのです。加工機械ひとつひとつは点でしかない。それを線で結ぶのがこのロボットです。工場のライン化を目的として設立したのが私どもの会社なので、必然的に社名にも反映されているのです。

‥‥‥社長がロボット産業に関わられたきっかけは?
 福岡で高校を卒業し、集団就職でこちらに出て来ましたが、26才の時に退職。溶接作業の改善や、生産技術の仕事をしていましたが、とにかく溶接の職場は暑い!作業中は温度計が60度を越える。大変です。そして金属が溶ける際に発生する、微粒化した金属を吸い込んでじん肺になってしまう人もいますし、健康にも良くないんです。これは人間がやる作業じゃない、と感じていました。そんな時に訪れた関連会社で、ロボットが可動しているのを見て、これからはこういう時代が来る。ロボット業界に入って思いっきり働きたいと思ったんです。それで何のあてもなく会社をやめ、独立しました。それからずっとロボット一筋。ロボット周辺設備の仕事をしたい!という一念、この道で生きて行くんだ、という思いが実を結んだのでしょう。
 今も社長の私が、図面を書いて商品を考案しています。決して専門の教育は受けていませんが、あの本田宗一郎さん同様、独学です。基礎さえあれば、後はヒラメキです。
 「LINEMAN」はインターネットで調べてみても世界初、1トン以上は他にありません。現在、2トン対応まで出来ていて、今後は3〜7トンのものをハンドリングできるロボットとして、サイズアップさせます。今までの自動溶接は自動化率が低く、60%が限界でしたが、このシステムなら90%以上を機械に任せられ、ほとんど人の手を煩わせません。
 我々中小企業は、やっぱりオンリーワン、世界初にならないと生き残れません。今では大企業にも真似されましたが、うちのシェアが圧倒的に多いのです。

‥‥‥他企業との結びつきはどういった形ですか?
 実は当社で特徴的なのは、融合化組合とは別に、もうひとつ、仕事上で密接な関係のある企業と、パートナー企業として結びついているんです。うちと四国にある1社。そして北陸にある2社。それぞれの会社とは極めて親しいおつきあいをしています。北陸の2社とうちの会社では、3社の頭文字で「KOTOLI(ことり)」グループというのを作って、未来工場をお客様に提案させていただき、工場の入口から出口までを一括受注し、それぞれの得意分野を活かして作業を進めます。うちがお客になったり、逆に向こうがうちのお客になったりもしますよ。異業種交流というと、地域限定型がほとんどですが、もう地域にこだわる時代じゃないですね。組合としてはなかなか認めてもらえませんが…
 「KOTORI」グループ結成の背景には、大手企業を凌駕する受注活動をするためにはどうすればいいか、という強い危機感と問題意識がありました。われわれ中小企業は、今までと同じことをやっていては、生き残る事はできない。だから開発製品として、世界初=オンリーワンを、いくつも持つことだと思っています。

‥‥‥大手を戦っていく手段とは?
 「売れるもの」には手を出さないこと。「売れないもの」を開発しろ、ということです。例えば、何かが売れたとしましょう。会社は設備投資をして大きな生産システムを作りますが、その途端に大手が参入してきて、中小の半分の価格で作ってしまうんです。その途端、その商品は売れなくなってしまう。向こうは莫大な資本で特許を潜ってきますから、提訴したって守り切れません。そのとき中小の方は大きくした設備と、増やしてしまった従業員がいっぱい遊んでいる状態で、借金を抱えて潰れていくんです。
 当社の主力製品である「SKETTE ROBO」だって、広告宣伝費のかけ方は半端じゃなかった。それでようやく売れてきた頃、大手が2社、さっそく真似しましたからね。しかし商品としてはそんなにバンバン売れるものじゃないですから、大手では1台2台売れたって、もとが取れません。数がたくさん出れば、大手の方が有利ですが、うちの方が性能の良さと安さを提供できるんです。中小企業っていうのはそのへんをしっかり考えないと。欲出して、売れるものを…なんて考えると結局、日の目を見られないんですよ。

‥‥‥社長が抱えるプレッシャーはやはり大きいですか?
 中小企業では、開発は社長の仕事です。外部からの様々な刺激を受け、プレッシャーを受け、アイデアを具現化する…それは社長の役割ですね。やれ資金繰りだ、納期だ…社長業はもう、いつも決死の覚悟です。中小企業の社長はみんなそうらしいですけど、ストレスでボロボロですよ。
 私は「大手が真似するほどのものを開発したんだ!」という自負と同時に、大手に真似されたという危機感を、次の商品を開発する意欲に変えていくんです。もっとすごいものを作ればいいんだ、ということです。
 ヒラメキなんて、四六時中考えてるからこそ出て来るもので、よく"突然降ってわいた"なんて言うけど、あれは嘘ですよ(笑)。ひたすら考え、常に頭のどこかに置いておく。食事中も、運転中も、外しちゃダメ。それがコツです。夢ではしょっちゅう見ますよ。よく覚えてないけど、夢の中ではいつもうまく行っているんです。それで、たぶん何とかやっていけるんじゃないか、と思えるんです(笑)。

‥‥‥今後の展望をお聞かせ下さい。
 今年10月には、ここからすぐ近くですが、工場を移転する予定です。工場は現在の3倍の広さになります。今の工場では1トン用のものが精一杯ですが、5トン用のロボットは、自重だけで6〜7トンになりますから、広さが必要なんです。今のままでは開発もできませんから…
 今のところ、まあまあ忙しくやっていますが、いずれそれは下火になって来るでしょう。その時には、小さな設備だけをやっていたのでは駄目。できればうちの競争力をアップさせて無借金とし、次の社長にバトンタッチできれば、それで私の役割は終わるかな、という気がします。まだ次期社長は決まっていませんが、それまでは無我夢中で働くしかない。それでやっと、私がこの世に存在したってことになるかな、ということでしょうか。工場の移転は勝負のうちに入りませんが、5トン用のものを世に出す時はかなり大きな投資になります。それが勝負の時だと思っています。
 
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