経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.29】
 
 経営革新を成し遂げ、会社が、社員が、社長が変わった
 
       2004年度日本経営品質賞受賞!              
 
千葉ゼロックス株式会社
     山内社長に聞く
 
日々進化を続ける情報社会、IT技術の過渡期にあって、「モノ売り=ハード中心」から
「コト売り=ソリューションビジネス」へとシフトを成し遂げ、2004年度、晴れて日本経営品質賞(大規模部門)を受賞した、山内社長にお話をうかがいました。
 
‥‥‥日本経営品質賞とは、どんな賞なのですか?
 Japan Quality Award(JQA)は、「卓越した経営品質の仕組み」を持つ企業を表彰するために財団法人社会経済生産性本部により1995年に創設され、日本経営品質賞委員会日本経営品質賞委員会が審査に当たる表彰制度で、今回で9回目。過去には淙々たる優良企業が受賞されています。かつて日本が世界での競争力No.1で、アメリカが15位に転落した時、レーガン大統領が日本やヨーロッパ・アメリカの優秀な会社をベンチマークして、国家的競争力強化のために「経営の教科書」を作ろうとしてできたマルコム・ボルドリッジ賞。JQAは、日本がこのマルコム・ボルドリッジ賞の思考やスキームをベンチマーキングしてできたものです。その基本理念は顧客本位、独自能力、社員重視、社会との調和となっております。

‥‥‥JQAとの出逢いはいつ頃ですか?
 私が97年に社長に就任した当時、社内はひどい有り様でした(笑)。社員は全くガッツが感じられず、あまり物を言わない、言われたことしかやらない。『売上げが上がったら海外へ連れて行ってやるぞ』と、目の前にニンジンをぶら下げても、海外へは行きたいけど頑張りたくはないと(笑)。正直、これは大変な会社に来てしまったなと思いました。
ちょうど業界自体が、ITの進化とともにアナログからデジタルへという変革期にありました。お客様からも、これまでの複写業務の効率化のみならず、業務の改善など問題解決型の営業を、という要望があり、「ハードからソフト」、「モノからコトへ」、そんな世の中の変化に対応できる組織能力をつけない限り、千葉ゼロックスも生き残れないだろうと感じました。
 私は親会社に「10年間社長をやらせてくれ」と言って出向して来ました。2〜3年で業績を上げるだけなら、何とか気合いだけで行けるが、業績を上げ続けるには会社の体質、経営を改革しない限り、難しいと思いました。そんな時、千葉夷隅ゴルフクラブの加藤元総支配人のお話を伺う機会がありました。千葉から1時間半も離れたゴルフ場で何故か業績を上げている。話を聞くと、やはりJQAの受賞企業であり、CSを徹底的にやっていました。当社もまず、JQAのフレームに沿ってCSそしてESを考え、少し時間をかけてJQAにチャレンジして行こうと考えました。

‥‥‥今回の受賞に至るまでの取り組みを教えて下さい。
 日本経営品質賞とは"経営の教科書"と言われ、製品またはそのサービスの単なる品質だけではなく、それを提供する組織活動全体を対象として、経営全体の質を問うものです。7年前の取り組みスタート時は、経営品質と業績とがどうしてもマッチングせず、苦労しました。幸いなことに、2000年に千葉県経営品質協議会が発足し、まずはこれに毎年応募したのです。そのたびに改善項目を50〜60ほどいただき、それをもとに、また翌年にチャレンジしました。3年たつと「継続は力なり」の言葉通り、会社組織の成熟度の向上が実感できるようになってきます。しかし本当に変化したのは私自身でした。もともと負けず嫌いでこれまでも利益は必ず達成してきましたが、次第に「ただ目先のことだけやっていていいのか」と自問し、やはり会社をどういう方向に持って行くかを見定め、絶えず社内を活性化し、お客様に価値を提供し続けない限り、企業として生き残れないだろう、と気づきました。会社をどう運営していくのか、経営者としての生きざまとは何か、そんな哲学的な考えになっていったのです。結局JQAに取り組んだことで、私自身の思考が変わって行きました。

‥‥‥具体的にはどのような変革をされたのですか?
 当社はメーカーではなく、販売会社であり「サービス業」です。「サービスを提供」するのは最終的に「人」となります。したがって「サービス業」としてお客様に評価される最も重要なファクターは「社員」となります。「サービス」はストックが効かない商品と言われその場で消費されます。サービスという「人にしか出来ない商品」を提供し、現場でお客様から評価をいただくのは社員「=人なのだ」と言うことです。ですから、まずは社員教育を重要点で実行してきました。
 ただお客様満足度を上げろと言っても、従業員が満足せずに、お客様にご満足はいただけません。「社員は月曜日の朝、楽しく出社しているか?」「自分の意志で自分の行動を起こせる社員を作るには、どうするか?」ものを言わない、言われたことしかやらない社員が多いのは、会社側の情報公開、透明性、オープン性が無かったせいではないだろうか。今働いている立場や会社の状況をもっと社員に話すべきと思い、成功している先輩企業をベンチマーキングして、私の気持ちを社員に伝え、会社がどう進んでいくのかを示してみました。毎週月曜日に"社長の思い"をWebで発信する「Passion-Window」は2年半続いています。社員からの返事も来ますよ。また経営トップ層と社員の直接対話「トークナード」、経営幹部による「ブレークスルー検討会」、役員によるお客様接点活動「VOS活動」などを行なっています。そのあたりから、社員は少しずつ変化してきました。

‥‥‥環境に対する取り組みはどうですか?
 当社はたくさんのお客様にプリンターや複写機をご利用いただいております。そのため用紙の使用という点では非常に環境へ負荷を与えていることになります。従って早めに環境保全活動に取組み、環境マネジメントシステムISO14001の認証を取得しました。出来る限り「紙の使用を減らしていこう」と考えています。最近は商品の進化で、情報(ドキュメント)はスキャニングしたり、電子的にハンドリングすることができたりしますので、用紙削減に寄与しつつあります。地球温暖化や異常気象が叫ばれる今、環境問題も本質・本音で考えていきたいと思っています。

‥‥‥「社員重視」については、どう取り組まれましたか?
 やはり社員一人ひとりは本質的に「誉められたい」「認められたい」と思っています。営業のマネージャーには、まず部下の話をよく聞くようにさせました。なるべく社員が考え、やろうとしていることをやらせ、出来れば褒めると社員が活性化してきます。また各々にテーマを与え、出来る限り、やりたいようにやらせてみる、そんな問題解決型の取り組みで、段々と社員が明るくなってきました。やりたいことをやれれば、時間を忘れて頑張れるものなんです。そして、上司が本気で取り組んでいれば納得してくれます。
 もちろん社員教育にも時間をかけました。とにかく進化が速いこの業界、できる限り外部の教育にも触れさせる。東京やアメリカのIT企業を定期的に視察し、直接目で見て、刺激を受けさせています。新たなビジネス展開を予測して「ビジネスキャリアモデル」を策定し、コンピテンシー(行動力発揮能力)の向上プログラムを社員一人ひとりに展開しています。必要な行動発揮能力要件やスキルを棚卸(アセスメント)し、それに対応する研修を実施しています。社員が目標を立ててスキル向上に専念できる環境づくりを目指しました。やがて社員は徐々に、自ら勉強するようになってきました。
 健康面では、かつては「肥満と高血圧と糖尿の社員」が非常に多く、6年前から産業医の先生と契約して、検診後、必ず社員に15分間面接してもらっています。社員が不健康なのは本人はもちろん、会社にとってもマイナスです。今では社員も皆、元気になってきました。よい会社を作るには、いい社員を一人ひとり作り上げることが大事です。お客様の業務をコンサルティングできるまでの資質を、時間をかけて育てていく。それが経営者としては面白いところでもあり、やりがいでもあります。

‥‥‥社員の皆さんの反応はどんなものでしたか?
 私には宝物があります。ひとつは昨年、千葉県経営品質賞の受賞時に、社員から私に「最優秀パッション賞」が授与されました。もうひとつは今回の審査終了の際に、私に届いた営業3年生の社員からのメールです。このふたつの文面が、今の私の宝物です。いいメンバーに恵まれ、今では本当に社長になって良かったと思っています。
 今回、幸運にも日本経営品質賞を受賞できましたが、今後は3年間にわたって定期的に報告会なども控えていますので、気を抜けません。この栄えある受賞を励みに、さらにエクセレント・カンパニーを目指して、頑張っていきたいと思います。

【最優秀パッション賞・・・社員が経営トップを表彰した賞】 (2003年4月)
「最優秀パッション賞、山内優殿。貴殿は千葉ゼロックス社長就任以来、その人並み外れた情熱と、愛社精神で、(時として受け入れられないこともありましたが)この激動の時代に対応していこうと頑張りました。(中略)思い起こせば社長が来られた6年あまりで、千葉ゼロックスは本当に変わったなと実感しています。例えば幸町の、ゴミ箱のような事務所で仕事をしていた私たちが今、WBGのきれいな事務所で働いている姿を、誰が想像できたでしょう。(中略)今後は営業本部と、モバイル通信事業部にバックヤードを、管理本部のあるマーケティング総括部におまかせいただき、社長はさらに立派な経営者になることを目指して下さい。まさにクオリティ・ジャーニーです。最後にお願いですが、今回の決算賞与は社員みんなが喜んでおります。今年度も一層頑張りますので 社員への還元を継続していただきたいと思います。その熱き情熱に敬意を表して。」

【日本経営品質賞の現地審査で、審査員からインタビューを受けた入社3年目の女性営業社員からのインタビュー終了後のメール】   (2004年11月)
「山内社長、お疲れ様です。まず一言、ホッとしました。普段の活動を話せばいいんだとわかっていながら、何を聞かれるのだろうとここ一週間ずうっと不安でしたが、今はとても清々しい気持ちです。いい経験になったと思います。このような機会を設けていただきまして、ありがとうございました。JQA審査を受けるに当たり、キックオフの際、伺ったお話の内容がとても印象に残っています。『あなたは人生の大半を千葉ゼロックスで過ごします。この会社を離れた時に、私は千葉ゼロックスにいたんだと、胸を張って言えますか?』という言葉。今現在では、まだ人に胸を張って言える状況ではないと、私は思っています。この審査を通じ、もっともっと千葉ゼロックスをいい会社にしていく力に私はなりたいと思います。今後はいろいろな行事にも参加します。何か新しい教育や仕組みがリリースされた時には、私が率先して勉強し、社内に広めていく役割をどんどん果たしていきます。今、仕事が楽しくてとても充実しています。この気持ちを社員全員で共有できればと思います。最後に、JQAに取り組むことは、受賞することが目的ではなく、いい会社、ブランド力を上げるための手段だとわかっていますが、『千葉ゼロックス受賞!』の記事を紙面で見たいです。」
------------------------------------------------------------

 
 前のページに戻る
  Copyright (c) 1998 Chiba Chamber of Commerce & Industry. All rights reserved.