経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.30】
 
 千葉名産の落花生
 
       「与三郎の豆」              
 
有限会社福井商店
     福井社長に聞く
 
畑の木の枝に花が咲き、花が落ちた場所にツルが伸びて、土の中に潜り、その先に実がなるのが落花生-----千葉の名産・落花生を扱う老舗「与三郎の豆」。年ごとの生産量や味に左右されながらも老舗の味を守る、福井商店の福井社長にお話をうかがいました。
 
‥‥‥ブランド名『与三郎の豆』のネーミングの由来は?
 海苔屋から商売を始めた時は、私の祖父の名から取った「総三郎海苔店」という屋号でした。昭和24年、この場所で商売を始めた当時、千葉は江戸前海苔の名産地。今の新宿中学校付近は海で、そのあたりの主婦達はみんな家計の足しにと、海で採ってきた海苔を巻き簾に干していたものです。ところが東京湾沿いは埋め立てられ、海苔は千葉の名産と言えなくなってきた。ならば、もう一つ、落花生があるじゃないかと、創業の翌年には落花生も扱うようになっていました。すでに「海苔店」の商標を取っていたので、落花生を始めるにあたり、印象深い屋号はないか?と考えたそうです。たまたま創業者である先代(私の伯父)が歌舞伎好きで、歌舞伎の人情話の、千葉の木更津を舞台にした「与話情浮名横櫛」に登場するのが"切られ与三郎"なんです。これなら語呂がいいと「与三郎の豆」で商標も取得し、先代が兄弟で始めたのがこの会社です。先代は器用な人で、字も絵も上手かった。店で使っている値札などのポップも、ついこの前、消費税込み表示になるまでは先代の直筆でした。今も商品のパッケージに使われているロゴなど、全て先代の筆によるものなんですよ。

‥‥‥農産物を扱う上での苦労はどんなものですか
 何しろ相場が安い時はいいんですが、不作になると辛いですね。原料が高くなりますし、かなり天候に左右されます。
梅雨にきちんと雨が降り、夏には日が照ってくれないとダメで、昨年は最初、雨が多くて心配しましたが、なんとか順調でした。考えてみるとここ数年、特にこの2〜3年はずっと異常気象ですね。落花生に限らず農産物は、一番困るのは冷夏ですね。
 私どものような落花生屋は、単純に原料を洗って乾燥させて、そのまま煎るだけなんです。加工したり何か足したりしませんから、結局は原料の出どころが全てなんです。産地で、どれだけ手間をかけて生産しているか。草刈りも必要、雨が少なければ水をまく、いい堆肥を選んで使う、それで味が決まってしまうんです。千葉ではいい品種が交配されて作られているので、種そのものは素晴らしいけども、それをどうやって育てているかなんですね。

‥‥‥市場には現在、外国産のものが多く出回っていますが?
 うちで扱うのは全て千葉産ですが、国産であることは誇っていいと思います。市場には当たり前のように安い中国産の落花生が並んでいますが、食べてみれば、その差は歴然ですね。ちなみに中国で作られる落花生も、種は千葉から持っていったものもあるそうですが、出来てくるものは違うということを、わかっていただきたいですね。
 現在、国産落花生の7割が千葉県産です。今、主に流通しているのは3種類で、「千葉半立」は千葉独自の品種を作ろうと研究を重ねて生まれたものです。小粒で味が濃く、収穫量が少ないので値段は高いのですが、どの品種よりも一番美味いと胸を張れる品種です。
 2つ目は「ナカテユタカ」という早生種。3つ目は「郷の香」で、ゆで落花生のために研究された品種です。(トルトメ)ゆでるには殻が薄くて火が入りやすい。それ以外にも10数種類あるのですが、今はほとんど出回っていません。ゆで落花生は日もちしないので、急速冷凍かレトルトにして販売しています。一度乾燥させた落花生は、ゆで落花生には使えません。畑から掘って、洗って、そのままゆでないと美味しくないので、昔は生産農家の人しか食べられない幻の味でした。値段ははりますが、レトルトのゆで落花生は結構売れていますよ。

‥‥‥その栄養成分が近年、注目されているそうですね。
 落花生には、リノール酸やオイレン酸など、身体にいい不飽和脂肪酸という油分がたくさん含まれています。たくさん食べても太りませんし、ニキビも出来ない、鼻血も出ません。それは大袋をひとりで食べたらわかりませんが、相当食べても大丈夫ですよ。落花生は健康食品なんです。昔言われていたように食べ過ぎるとよくない、ということはありません。血中のコレステロール値を下げてくれるし、心臓病にもいい。油=身体に毒、という時代は過ぎて、オリーブオイルなどの植物油を筆頭に、逆に身体にいいと見直され始めています。その代表例が落花生なのです。

‥‥‥加工品などはどんなものを扱っていますか?
 製品化される落花生と同量の、さらに不作の年なら、それ以上の量の下物が出ます。うちでは、そこからピーナッツペーストを作っています。添加物は何も加えず、殻を剥いてフードプロセッサーでひたすら細かくすると、100%ピーナッツの、とろとろのペーストが出来上がります。それだけ実の中に油分が多いんですね。ほうれん草などの野菜と和えるなど、お料理などにも使いやすいよう、うちでは砂糖を加えずに製品化しています。うちの落花生せんべいには、このペーストを小麦粉の生地に混ぜていますが、他の油分を加えずにおいしく焼き上がります。そういう作り方ですから、日もちはしません。以前は保存料を使っていましたが、今はなるべく使わない方向です。豆菓子などにも、天然由来の着色料を使うようにしました。耳かき1杯で濃い色がつく合成着色料と違い、天然の色素はたくさん使わないときれいな色が出せません。でもお客様にしてみれば、ちょっと色がくすんでいても、天然のものを選びたいんです。今の時代、合成のものを使わないことが、ひとつのセールスポイントになるんですね。

‥‥‥老舗が生き残っていくための方策などお聞かせ下さい。
 現在、売上げのほとんどは地方発送などのギフトが占めています。お中元やお歳暮で、千葉から送ってもらうのは落花生だと、楽しみにしている方のためには中途半端なものは作れない。一番恐いのは、毎年「送ると喜ばれるから」と買って下さるお客様が、先様から「今年は何か味がおかしかったよ」と言われた、という話を聞く時です。とにかくお客様からのクレーム処理は全て、私自身がやっています。まずお電話、そして一筆お手紙を書き、新しい商品を添えて送る。責任の所在は全て私にありますと、これだけは何があっても、続けていかないといけません。
 不作の時は、やはり品質も落ちてしまいます。工業製品ではなく自然のものですから、仕方がない場合もある。でも、もらった方には、そんなことは関係ないわけです。千葉の天候が悪かったと言っても、北海道や九州の方には理解できません。以前、榮太樓總本舗の会長に言われたんですが「老舗を放っておくと苔が生えちまうぞ」とね。苔が生えたものなんか売れるか、苔は食えねえんだぞと。これを言われた時、全国的に有名な会社でもそうやっていつも模索しているんだと、身につまされました。老舗は老舗なりに、常に看板を磨いていないとダメなんです。
 今、我々のターゲットは中高年世代ですが、次の世代になった時にどうするのか。特に若い人達はお歳暮やお中元といったギフト離れの傾向が強いですから、盆暮れに贈り物をするという日本ならではの習慣が減りつつあるからこそ、若い世代にどうアピールしていくかが鍵ですね。

‥‥‥今後の展望をお聞かせ下さい。
 つい先月、新しいホームページを立ち上げました。アドレスはyosaburo.com。こちらで通信販売も出来るようになりました。意外と年輩の方からのアクセスも多いんですよ。近い将来、地上デジタル波が普及すれば、今よりももっと簡単に、テレビの画面とリモコンで、高齢者でも簡単に、テレビのインターネットが利用できるようになるでしょう。実はこれから高齢者の仲間入りをする世代は、一番の需要なんです。お金も暇もある、そしてものすごく健康志向が強い。お昼の例の番組で取り上げて、身体にいいと言われた食材は市場から姿を消すような大騒ぎになるでしょう?いつかあの番組で、千葉の落花生も取り上げて欲しいと思いますね(笑)。

 
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