経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.35】
 
 光通信、環境、医療産業分野で独自の技術力を活かす
 
     
  「新製品の開発でオンリーワン企業を目指したい」
      
 
           
 
株式会社モノベエンジニアリング
     物部社長に聞く
 
 創業以来培ってきた幅広い分野での超高精密加工技術と、それらを複合させた特異な技法を持ち合わせることで、多くの分野にわたる物づくりをテーマとしてきた株式会社モノベエンジニアリング。その歩んできた軌跡を物部長順社長にうかがいました。
 
‥‥‥●創業当時の様子を聞かせて下さい。
 私は27才の時、結婚を機にサラリーマンを辞めました。3年勤めた会社を、女房も知らない間に(笑)、結婚後1ヶ月で退社したんです。会社では大手メーカーの機械加工の下請けの仕事をしていました。社内の隅から隅まで廻されて、さらに半年ばかり他の会社に出向して、機械部品の設計や、金属や樹脂の取扱いなどの経験を積みました。3年間に、ごく広く浅く一通りの部署を経験することが出来たんですね。
 創業は昭和43年、花見川団地の自宅で、電話番は家内。夫婦2人で始めました。最初はものすごく良かったです。サラリーマン時代に2万8千円弱だった月給が、独立したその月には即座に10倍になりましたから。当時は機械関係の加工技術において、横のつながりというものがほとんど無く、ひとつひとつが専門分野でしたが、私は会社員時代の経験から、いろいろな仕事の行程を結び付けていきました。自ら設計し、図面を引いたものを見積って値段を出してしまえば、作るのは簡単です。工程数を少なく抑え、材料も無駄にならない合理的な加工技術を、違う機械、違う部品においても横に結び付けて製作していく。ある時は小さな部品であったり、その部品を自動的に大量に作るための機械であったり…しかし新しい製品のアイデアは、出す先からすぐに大手のメーカーさんがやってきて、そのまま持っていかれました。今はきちんと契約し、特許を取るのも当たり前ですが、その頃はうちも目先のことで精一杯で、特許を取るなんて考えもしませんでした。



‥‥‥●創業時から順調に成長されてきたのですか?
 創業1年程で、家が1軒建つくらいお金が出来ていたのですが、その後ドルショックが2回、石油ショックが2回、交互にありました。それなりの規模の会社とおつきあいしていましたが、あっけなく倒産していき、その後2〜3年たってようやく当社の方のめどが立ってくると、また付き合う会社が潰れていく、それが続きました。数百万、1千万円を超える不渡を何度もくったものです。合わせると億に近い額じゃないでしょうか。一番辛かったのは、子どもが年子で、ちょうど生まれて間も無かったためにミルクが買えなくて本当に困ったことです。



‥‥‥●そこから挽回されるまでのご苦労はどんなものでしたか?
 銀行にも見放され、本当はこちらももう逃げたいんだけども、出来るだけ約束を守ることに努め、金策が出来ないならば早めに言って何とか待ってもらい、そのうち2回、3回、4回と不渡りをくらうたびに「よくくうなあ〜」と、周囲が一生懸命協力してくれるようになったんです。
 やがて創業10年を迎えた頃、技術的に結構難しい発注がありました。アメリカの家電で、台所で使う大型で特殊な形状のミキサーの回転する部分なのですが、シンプルなわりに加工が難しい製品でした。まともに作ると大変な工程数がかかりますが、加工する機械まで含めて製作し、当社ではたった2工程で作ることが出来ました。いろんな会社を廻りまわって、最後にうちに来た話でしたが、その製品はかなり売れました。輸出品ですから現金が入ってくるようになり、業績が上がりました。




‥‥‥●これまで手がけた製品のジャンルは多岐に渡っていますが?
 数え切れない程、様々なものを作ってきましたが、実は営業というものをしたことがなく、全てパートナーあっての仕事でした。他では出来なかったからと、うちに持ってきていただくのですが、加工という仕事は値段的にも相手に左右されますし、安定しない部分があります。
 そこで7〜8年程前から、自分たちの製品、自分たちで値段を付けられるものを開発していこう、という方向にシフトしました。折しも時代の流れとして、環境関連や光ファイバー技術が注目され、さらに医療関係では胃カメラや内視鏡といった、新しい技術が普及し始めていました。
 そんな中で誕生したのが、光ファイバーを接続する「金属光フェルール」。光ファイバーが0.125ミリ、我々日本人のちょっと太い髪の毛くらいの太さですが、その中のさらに1/10くらい、10ミクロン程の部分を光が通ります。それをホールドするには、限り無くゼロにしないとダメなんですね。そういった超精密製品ですが、なかなか売れないで困っています(笑)。光通信関係は、うちがちょうど第1回ベンチャーカップCHIBAでグランプリを受賞して、これから光に取り組もうかなと思った4年前に、もうバブルが弾けてしまっているんです。



‥‥‥●現在、力を入れている製品はどのようなものですか?
 今は医療関係(内視鏡に附属する処置機具に使用する特殊なワイヤー)と、汚水をろ過する「MAXフィルター」ですね。このフィルター開発には6年程かかりました。当初、32種類ものフィルターを集め、手に入らないものは自分たちで作って、その全てのフィルターからそれぞれの"いいとこどり"をして、相対的に優れた製品を作り出しました。「MAXフィルター」は、高性能で半永久寿命のバネ式ろ過装置で、土木工事から温泉、食品、河川湖沼の水質向上から重工業や発電まで、あらゆる分野の汚水を瞬時にろ過し、ろ過後は逆洗させることによりメンテナンスフリー(フィルター交換の必要なし)という特徴があります。製品そのものには自信がありますし、価格もそれほど高いわけではありません。それに高度成長時代に作られたろ過フィルターが、ちょうど今、取り替えの時期に入っています。しかしフィルターを使う側は結局、実績のない新製品を使うのは避けるんですね。その上、使い慣れた製品の方も、昔購入した時よりは多少性能が上がっているので、そのまま迷わず使い続けてしまうんですね。



‥‥‥●環境保護の面で、非常に画期的な製品なのですね。
 最近は大手にも少しずつ導入され始め、いくつかの大学の研究室でテストが行なわれています。何年か前から千葉工業大学や摂南大学に機械を入れて、また昨年暮れからは九州大学で、造船関係のテストをしています。
 今、船のバラスト水(積み荷を降ろした後にバランスを保つため積み込む水)が世界的な問題になっていて、年間琵琶湖の水の2〜3杯分が世界の海を行ったり来たりしています。例えば大型タンカーが東京湾で水を積んで行き、オーストラリアの港でそれを流す。オーストラリアの海では東京湾の水に生息していたオミヒトデが珊瑚礁を破壊してしまう。また北米の五大湖の湖底では日本の藻が大繁殖している。東京湾では、中国の船が持って来た上海蟹が大発生する。海の生態系がめちゃくちゃになっているんです。2009年からはバラスト水の厳重な管理が義務付けられます。積んでいいのはきれいな水だけです、これの浄化にはぜひ「MAXフィルター」を役立てていただきたいですね。
 製品開発のアイデアは私が考えて、図を書いたものを社員が形にしています。受注して加工するという工賃仕事を4〜5年前から減らしてきたので、社員は少なくて済みます。今は自分たちの作ったものだけに集中できるようになりました。
 「MAXフィルター」が世に認知されるまでは、まだまだ時間がかかるかもしれませんが、当社のモットー「新しい時代に合った楽しい物作り」というテーマのもと、今後もよりよい自社新製品の開発に尽力してゆきたいと思います.。




 

 
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