経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.46】
 
 業界が激変する時代の中、30周年の節目を迎える
 
 「写真業から印刷業へ
  生き残りをかけた思い」
 
株式会社白樺写真工芸・大日方社長に聞く
 
  街の写真店としてスタートした株式会社白樺写真工芸。製版から製本までを担う印刷業に乗り出してからは13年。デジタル化の波に翻弄される時代を生き抜く、大日方社長にお話をうかがいました。
 
‥‥‥●創業当時のことをお聞かせ下さい。
 
もともと私は写真屋でした。当時はさつきが丘団地の中で、白樺写真店を開業したのが昭和50年。私たち夫婦と弟、家族で店舗を借りて経営する小さな写真店でした。1階が店舗、2階が住まい。それがこの土地でのスタートでした。その翌年に有限会社として法人化し、株式会社に組織変更したのが昭和60年。その年の10月、山王町に本社を移転したんです。そして昭和61年にカラー現像所を設置しました。今でこそ「ミニラボ」という形が一般的になり、写真を自社で現像するのも当たり前になりましたが、あの頃、写真の現像というと、各都道府県にそれぞれのフィルムメーカーが「ラボ」を持っていて、そこへ直接フィルムを持っていくか、ラボの方が写真屋さんを回ってDPEを回収し、自分のところで現像して、またお店に戻すというシステムだったんです。それを、自社で出来るようになったというのは、千葉県内でも早い方でした。




‥‥‥●業務拡大のきっかけは何でしたか?
  写真業から印刷業へ、業務を拡大したのが平成5年。当社ではそれまで、学校の卒業アルバムを数多く手がけていました。自社で版下まで作った後、外注で印刷を頼んでいたのですが、それを自分たちで一括して作ろうと、製版・印刷、そして最新の製本の設備までを揃えることになったのです。いわゆる内製化ですね。当時はこの社屋と、近くに工場を借りていましたが、その後平成9年に印刷製本工場を八街市に造りました。



‥‥‥●新たな業界への参入はスムーズでしたか?
  最初は失敗の連続でしたよ。写真だけやっていた社員に、印刷の仕事を覚えてもらったのですが、確かに写真と印刷は兄弟のようなもので、出版物にしろ広告物にしろ、双方が欠かせませんから、共通している部分もたくさんあるんです。だから導入としてはすんなり行きましたが、その後が大変でした。お恥ずかしい話ですが、失敗が多くてね。印刷を失敗したものを業界用語で「やれ」と呼びますが、「やれやれ」とため息をつく「やれ」かもしれません(笑)。その「やれ」が、工場の中に山と積まれていました。お客様に出せないものなので仕方ないのですが、毎日のように増えていくのを見るのは辛かったですね。それを業者さんが回収にきて、一度はきれいになる。それが翌日、行ってみるとまた一杯になっている。試行錯誤と言えば聞こえはいいですが、印刷だけでなく製本も同時に始めたので、かなりの量の失敗がありました。その頃は辛かったですね。でも社員たちみんな、本当に頑張ってくれて、現在では印刷関連事業をメインにすることが出来ました。



‥‥‥●近年、印刷業界は目まぐるしい進歩を遂げていますね。
  八街工場の落成後、当社でもほどなく製版設備のデジタル化に踏み切りました。デザインのデータを工場に送ると、パソコンからダイレクトに製版、印刷機にかける前の段階まで作ることが可能です。従来はいったんフィルム出しという作業があって、カラーのものはYMCKそしてブラック、という4版にフィルムを出し、それを刷版、印刷用に焼き込むという作業があったんですが、今はデータからダイレクトに版を出すシステムになっています。このデジタル化も、当社は早い方でしたね。今となっては当たり前のシステムなんですが。
 それに続いて、機械の方もデジタルに対応させるべく、菊半裁四色機(カラー印刷機)の導入に踏み切りました。その頃はデジタル対応のカラー印刷機というのはまだまだ少なかったんです。これも今では当たり前になっていますが、機械にデータのメディアを差し込めば、それだけで機械の方がデータを読み取ってくれて、インクの量を自動的に調整してくれるという画期的なものでした。ほんの10年足らずの間のことですが、短期間でこれだけ技術も進歩していくし、その流れに合わせていくのは本当に大変なことでした。



‥‥‥●やはり設備投資は重要なのですね。
  印刷業というのは分業化された業界です。まずはデザインなど製作する広告代理店や製作会社がお客様の窓口になり、それから印刷の版だけを作る専門の製版会社があります。それから印刷会社。印刷だけをやる会社ですね。最後に、印刷したものを本にする製本屋さん。なぜそんなに細かく分かれているかと言うと、ひとつひとつの行程のための設備にものすごくお金がかかるからなんです。ですから自社で製版から製本までというのは、ものすごい設備投資でした。当社の場合、設備のためだけに年商とほぼ同じくらいかかっている年もありました。ただ、自社で
100%対応できることで無駄も省けますし、利益は確かに上がります。製作の段階から全て1ケ所で対応できることで、いろいろ融通もきくし、納品までの期間が短くできるメリットもあります。今の時代、全てにおいてスピードというものに左右されますからね。




‥‥‥●業界をとりまく情勢は厳しいようですが?
  
写真現像店は今、かなり厳しい状況です。デジタルカメラとパソコン、プリンターの普及で、写真プリントが家庭で出来るようになった。デジカメの普及で、写真というものの価値そのものが変わってきましたね。写真を撮ることは特別なことではなくなり、わざわざプリントして残さず、パソコン画面上で一度見て終わり、という方も増えています。気軽に撮れて、撮りなおしも可能、写りが悪ければデータ上でどんどん消していく。CDに焼いて保存はするけど、撮ってそれっきり。大切な思い出としてアルバムに貼っておくのと違って、後から見返すこともないという方も多いのではないでしょうか。ちょっと寂しいような気もしますね。
 同時に、印刷業界には本当に厳しい時代になりました。いろいろな業者さんも、今までにない最悪の年だと皆さんおっしゃいます。世間で景気回復とは言っても、やはり広告宣伝費はカットされやすいですし、予算は削られる一方です。また企業や家庭にOA機器が急激に普及して、パソコンしかり、コピーしかり、ちょっとしたものは自分たちで作ってしまえるようになった。さらに記録として紙で残していたものもペーパーレス化し、メディアにデータで残すようになってしまった。我々の仕事そのものが激減しているのです。
 


‥‥‥●会社設立30年を迎え、生き残りにかける思いをお聞かせ下さい
  今、八街の工場を増築中です。カラー印刷の作業が増えて印刷機を増設するのですが、ものすごく大きなサイズですから工場の中に入り切れないので、敷地内で増築しているところです。
 今後、生き残っていくためには必要最低限の設備を用意しておかないと、やはり競争に負けてしまう。端から見ると「よっぽど儲かっているのか」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。確かに売り上げは上がっていますが、どれだけ残るのかと言えば、いわゆる骨折り損のくたびれナントカですよ。どこの印刷屋さんも、みんな大変なんじゃないでしょうか。例えば売り上げが10%上がったとしたら、実際の仕事の量は2025%は上がっていると思います。それだけ頑張っても、単価が落ちているために利益は残らないんです。今年あたりが、印刷業界はいろんな意味で山場でしょうね。どなたに聞いても、それが業界内での共通した見解のようです。



‥‥‥●販路拡大のポイントはどういった部分ですか。

  学校関係だけ見ても少子化の時代です。卒業アルバムなども、生徒さんの数そのものがロットにつながります。将来的に見ると厳しいですから、一般企業や病院、ケアセンターなどの福祉施設でパンフレットやチラシなどのお仕事もいただけるよう努力しています。特に平成14年頃からは、写真の撮影からデザイン、印刷までをサポートできるというメリットを活かし、小さな注文もどんどんお受けしてきました。ノボリ1枚でも2枚でも、季節ごとのちょっとした販促物、お蕎麦屋さんなら「冷やし中華はじめました」というポップ1枚でもいい。私どもが作ってさしあげて、お手伝い出来ればいいなと思いますね。
 印刷のデジタル化で、小ロットの印刷物でも割高感は無くなりました。オフセットではなくオンデマンドというシステムがありますから、そういった点では非常に便利になっています。大判の出力機も高品質になりましたし、小ロットでも安く出来るようになったんです。今年5月にオープンした併設のメディアプリントショップ「デジタル55」も、お陰様で徐々に認知していただき、写真はもちろん名刺からちょっとしたチラシの印刷までお受けしています。せっかくデザイナーが社内にいるのですから、紙の上だけでなく、販促物までトータル的に「何でも出来ます」と言えるようにしたいですね。大判出力のポスターやスクリーンなども、以前はそれらに対応する設備も無く、お断りしたこともありましたが、今後はぜひ対応していきたい、そこに生き残りをかけたいと考えています。



‥‥‥●中小企業の社長としての思いをお聞かせ下さい。

  私自身、人が好きな方でね。会社があって、社員たちがいて、一緒に頑張ってくれる毎日が好きなんですね。目まぐるしい情勢の中で変化に富んだ事業展開が出来る。そんな仕事に携れることにやりがいも感じますし、辛いことももちろんありますが、仕事自体は楽しいですよ。たった一度の人生です。事業をしていればお金の苦労は常について回りますが、新たな発想を持って継続していくことはやはり楽しい。人との関わり合いの中で自分の考えてきたことを実現できる。生まれ変わったとしても、私はまたこの会社をやりたいと思っています。





 
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