経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.47】
 
 時代を生き抜いた、椿森陸橋のランドマーク
 
 
「老舗弁当屋、今が第2創業のとき」
 
株式会社万葉軒・倉石社長に聞く
 
  昨年12月、新しい本社ビルが完成し、椿森陸橋交差点のランドマークとなった株式会社万葉軒。今が第2創業を合言葉に、千葉県No.1弁当屋を目指す倉石社長にお話をうかがいました。
 
‥‥‥●創業当時のことを教えて下さい。
 
私の祖父の時代に、何人かの同業者と合資会社として興したのがこの会社です。もともと3人がそれぞれ駅で商売をしていて、雑貨などを扱っていたようです。そこに私の祖父が加わって合同経営形式で発足し、同世代の4人が数年で代替わりしたため、祖父は実質4代目社長です。ですから私が6代目に当たります。
 大学は社会学部観光学科に在籍し、卒業後は東京のホテルに就職しました。お弁当屋もサービス産業ですし、そのサービス産業の集大成は、やはりホテル。3年あまり勤めました。その後、千葉に戻って当社に入り、稲毛の弁当売店でしばらく働きました。ちょうどモータリゼーションが盛り上がってきた、コンビニもファミレスも全くない時代。しかも東京湾岸で埋め立て工事をしていたから、お弁当をお求めのお客様は大勢いました。信じられないことに、今の10倍以上売れていたんですよ。日曜日になると国道14号線を走る車がみんなうちでお弁当を買って頂ける、凄かったですよ。店の中に置ききれないほど置いても、あっと言う間に売れてしまいました。また今も営業している稲毛の「せんげんそば」をはじめ、飲食店もいくつか手がけました。だから私は蕎麦が打てるんですよ(笑)。失敗したことも含め、ずいぶんいろんな事をやってきました。幕張メッセ創成期には、地元の飲食業の皆さんと会社を作り、出店したこともありましたね。




‥‥‥●コンベンションセンターについて随分学ばれたそうですね。
  幕張メッセができる前に、アメリカのコンベンションというものが見たくて、独りで渡米してしまいました。何のつてもないまま、強引に行ってしまいました。でも空港に着いた時点でビビってしまって(笑)。それでも、初めてLAのコンベンションセンターにたどり着いた時は感激しましたね。それから2ヶ月近く10ヶ所以上のコンベンションセンターを見たり、ショッピングセンターを見たり、アメリカで単身ウロウロした経験が、今の私の原点になっています。あの時の出会い、人との触れあいは大きかった。今も家族ぐるみでおつきあいしている方が何人もいます。いろんな人に助けられましたね。それに、一歩踏み出さねば、何も始まらないという体験をたくさんいたしました。
 今も思い出すだけで涙が出そうになるエピソードがいくつもあるのですが、お弁当の原点ってこれだな、と強く感じたのは、ある日系アメリカ人の家庭でお世話になっていた時、私はローカルの長距離バスに乗ってサンフランシスコに行くことになったんです。それで朝5時に、乗り場まで送っていってもらった。バスに乗る前に紙包みをひとつ渡してくれて、車内で開けてみたらジュースと、簡単なサンドイッチが入っていたんです。あれは本当に嬉しかった。もちろん子どもの頃、自分の母親が作ってくれた弁当の思い出もありますが、他人が私のために朝早く用意してくれた、シンプルでちょっとした弁当。これこそ、心のこもった食事だなとつくづく感じましたね。あの紙袋に入ったランチが、私は忘れられない。アメリカでも日本でも、そういうありがたい方々が、いつも私の周りにいて下さったんですね。



‥‥‥●新社屋にされたきっかけは?
  椿森交差点は事故や渋滞が多いため、道幅の拡張工事が始まる際、うちの敷地と建物の一部があたってしまい、市をはじめいろいろな方面の御支援もあり、立て替えることに致しました。少し面積が狭くなったぶん上へ伸びて、5階建てになりました。1・2階は駐車場で、出荷と販売も2階、ここで買ったお弁当を召し上がっていただくことも出来ます。実は予想外に、この本社売店に多くのお客様がいらして頂いています。徒歩はもちろん、お車で気軽に立ち寄って下さる方が多い。以前は、ここで召し上がられるのはタクシーの運転手さんが多かったので、眠気覚ましにとコーヒーは無料で、お味噌汁もタダにしていました。新社屋ではマッサージチェアも置いて、ぜひ使ってもらおうと思っているんですよ。また、御婦人や町内のお集まりにも無料でお使い頂いております。
 最初はパワーが集まるというピラミッド型にしようという案もあったんです。ただ土地の形が正方形ではなくなったのでちなみに色は殺菌力のあるワサビカラーです(笑)。万葉軒の葉っぱの色のイメージもありますね。よく社名の由来を聞かれますが、先代いわく千葉だから、千より大きな万で万葉、あるいは万葉集の万葉、ということらしいです。万葉集というのは貴族から庶民までの歌を集めたもの。葉というのは当時で言うところの言葉、情報のこと。だから皆様のご意見やご叱責、いろんな思いを集めた会社でありたいですね。
 今はとにかく率直に、本音でやっていくことを徹底しています。皆が目的を共有できる会社にしたい、これに尽きます。新社屋が完成した今が第2創業、リスタートです。社員の方達もよく理解して頑張ってくれています。ただ、建物が出来たことで安心してしまってはいけません。慢心やおごりがないようにいつもハラハラしています。お客様にこの新本社を御覧になったイメージどおりの商品を提供しなければなりませんし、そのような会社にせねばならないと思っています。これも、先代、先々代が真面目にコツコツ一生懸命働いてくれたからこそ、今があると思いますので、これからも衛生と安全を最優先にしながら、常に変化をしてゆく会社にしてゆきたいですね。



‥‥‥●一番の売れ筋はどんな商品なのですか?
  今、一番売れているのは「菜の花弁当」「漁り弁当」「とんかつ弁当」「大漁万祝」など。昔からあるものと新しいものが半々ぐらいですね。味は、時代によって変化しています。もともと千葉の味付けは濃いので、最近はかなり薄味にしています。できればもっと薄くしたい。新商品を出す時は必ずモニタリングし、特に味に厳しい女性の意見を取り入れていますね。女性向けに作った「こまち」は量も抑えめで、よく売れています。そしてなるべく揚げものを減らすこと。うちの得意は焼きもので、これからもっと、焼きもののバリエーションを増やしていきたいですね。
 ここ数年は千産千消の動きに乗って、地元千葉産の海の幸、山の幸をふんだんに使ったお弁当を発売してきました。生産者の方ともいい関係が持てるようになり、熱心な生産者が増えて、本当によくしていただいてありがたいです。千葉は、野菜にしても、魚介にしても美味しくていい食材ばかり。お米はもちろん千葉産ですが、お弁当の全体から見ると県産品の使用割合はまだまだ低いと思っています。これからさらに千葉産の食材の比率を上げていきたいと思います。現在、地元老舗業者さんとのコラボレーション駅弁なども期間限定で提供させてもらっているんですよ。



‥‥‥●新たな試み、取り組みなどはありますか?
  
新商品は常に開発中で、頭の中は新商品のことでいっぱいです。今まで殆んど私がやっていたのですが幸い、昨年ロッテマリーンズの活躍で交流戦のころよりうちのお弁当がご好評いただいた頃からかなりの部分を、スタッフが商品開発を担うようになり、楽になってきました(笑)。
 新たなマーケットとしては、たとえば、格安の日帰りバスツアーや、会館などでのセミナーや講演会など、近年は弁当がつかなくなってきています。だからその日に注文を取って、お届けする。これは、毎日ある程度の数を作っている弁当屋にしか出来ません。私共ですと、当日の急な注文に対応できます。私共でしか出来ないことをやる、というのは常に課題ですね。お弁当のマーケットもあらゆる方面に拡がっていき、常に時代とともに動いています。目指しているのは、かゆいところに手が届くサービスです。当社の方針は、望「お望みのものを」・喜「喜ばれるものを」・楽「楽しいものを」・味「美味しいものを」です。これは、ものを「事」と替えてもいいのですが、お客様の御要望に最大限の努力をしてまいりたいですね。
 現在、当社ではMCN(万葉軒カスタマーズネットワーク)の確立に尽力しています。なぜこれまで弁当屋がやらなかったのか不思議です。美容院でも薬屋さんでも、ポイントがたまったらサービスしてくれる。うちはカードこそ作りませんが、お客様にロイヤリティーでお返ししたい。そのネットづくりは急務だと考えています。その基盤作りを、今年は重点的にやるつもりです。



‥‥‥●業界の流れの中で、時代とともに目指していきたいことは?
  
駅弁業界は、客観的に見ると販売数そのものは落ちています。しかし駅弁の購買層は40代後半〜70代が中心で、実は長年変わっていません。千葉の場合購買動機はさまざまですね。少子高齢化で、駅弁を買う世代は増えていく。2007年問題も、我々にとっては歓迎すべきム−ヴメントととらえています。
 ここ20年の弁当業界で、最大の功労者はコンビニエンスストアですね。昔、お弁当って朝とか昼に食べるもので、夜には食べなかった。それを覆してくれたのがコンビニ。お弁当という形態を、オールウェイズ・オールタイムなものにしてくれたんです。私共でも、夕方から届けるお弁当なんてかつては野球場くらいでしたよ。それはもちろん皆が気がついていること。コンビニではお弁当のメニューがしょっちゅう変わり、高齢者向けのものも作り始めている。発想の転換からマーケットをつくってゆく為には、これからまだまだやれる部分はたくさんあると思います。お弁当というのは誰でも始められます。誰でも出来る職種だからこそ、誰にも出来ない部分を探していかねばなりません。やれること、やらねばならないこと、やってみたいことは、まだまだたくさんありますね。望・喜・楽・味の気持を常に忘れずにすすめてまいります。
 






 
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