経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.57】
 
だから私は、毎日、できるだけ、少しでも私が…

人の心を荒ませない
 人間教育を続けたい。一生

 
有限会社高山測量事務所 高山 尚士 社長に聞く
 
  4月2日、有限会社高山測量事務所では、手作りの温もり溢れる入社式が行なわれました。感動のあまり、たった1人の主役である新入社員が涙を流すと、思わず目頭を熱くさせる列席者も…。社員を育てることにこだわり抜く高山社長にお話をうかがいました。
 
‥‥‥●入社式を見せていただきましたが、素晴らしい式でしたね。

 ありがとうございます。
 
やはり社員教育というものは、実際に見てもらわないと感動が伝わりませんから。式の準備は全て社員たちが率先して、まるで文化祭のようにわいわいやっておりました。ささやかな晴れの席を設け、ひとりひとりから真心を込めた祝辞をもらい、花束と記念の歌とで、不安な気持ちを抱えながら加わった新しい仲間を歓迎します。社長の私が言うのもなんですが、非常に情の深い、思いやりのある社員に恵まれていると自負しております。その部分だけは、日本一の測量会社じゃないかと思っております。
 バブルの崩壊後、中小企業ではどこも経営が厳しくなり、入社式も社員教育もしなくなりました。ですからこういった式をすると、今日入社した彼女のように、中途採用の社員には特に感動と受け入れられた安心感を持ってもらえますので、社員教育は欠かせません。翌朝一番に400字詰め原稿用紙2枚以上、入社式のレポートを書いてもらいます。それが終わるまで仕事をさせないくらいです。



‥‥‥●社員教育にこだわるのはどういった理由からですか?

 私は以前、サラリーマンで営業をやっていたのですが、そこは旭硝子の系列下の会社で、非常によく社員教育をしてくれました。その後、私は父親の会社を手伝うことになり、昭和57年、41歳の時に社長を継いだのです。なぜかその時に「立派な日本人を育てたい」「美しい国づくりの一役を担いたい」という志を抱きました。これが今の社員教育の目標につながって、25年間続けてこられました。 今日入社した彼女にはこれから1ヶ月かけて社員教育を行いますが、まずは畳の上で正座が出来るようになってもらいます。そして初任給をご両親に渡す儀式、その口上からお辞儀の仕方まで教えます。するとほとんどのご両親が涙を流して喜ぶそうです。その姿を見ることで、本人も変わっていく。自分の喜びが親の喜びに繋がっていることを自覚していくんですね。それから自分の誕生日には、社員の皆から花束とハッピーバースデーの歌、「おめでとう」の3点セットで祝福されて、お昼からは両親に感謝し親孝行してもらうため、休みを与えます。またご両親の誕生日にも親孝行するために休日にしております。それら全てにレポートを書いてもらっております。


‥‥‥●社長からご覧になって、現代の若者の問題点とは?

 ひとつは責任が取れないことで「すみません」と言えない。そして周囲に対する「ありがとう」という感謝の気持ちを持っていないこと。特にここ数年、一番私が憂えているのが、自分の言動が周りにどんな影響を与えるかが予測できない若者が増えたことです。青少年による事件が世間を騒がせる中、どうやって、当社の社員教育の中で、人としての原点、本当に単純なことから、人間関係の中には絶対の世界があるんだということを教えるか。そのためには感動を与えないと駄目なんです。
 
私は社員には3年いたら辞めてもいいと日頃から言っております。もし当社を辞めてしまっても他で頑張ってくれればいい。3年当社に居てもらえれば、その間に私が全て教えたい、という気持ちでおります。



‥‥‥●会社をあげて清掃活動に取り組んでいるそうですね?

 ハイ、なぜ掃除なのかと言えば、きめ細かさを身につけるというのは、人生においてとても大事な事だと考えております。仕事をする上で必要な、気遣い・気配りに変わっていくからです。単純で単調な作業を続けておりますと、人はいろいろなことを気づいていくんですね。やがて「掃除をさせてもらってありがたい」と気づく。最近では、学校の授業の中に掃除を取り入れたいというご要望があって、私と社員は、小学校から高校まで年間約2030校へ指導に出向いております。こういった活動をすることで、人の気持ちを荒ませない、そんな人間教育を続けていきたいと思っております。自分の周りをきれいにしておけば、人の心は見たものに似てくる、と言いますから。
 
私たちが知っている日本の社会って、助け合ったり許し合ったりする心がかつて当たり前のように存在しました。親子、兄弟で殺し合うなんてことは、4050年前は絶対無かったと思います。世の中を良くするには、ひとりひとりが良くなっていかないとだめだと思います。会社で社員ひとりひとりが良くなれば、各々の家庭も良くなるでしょうし、家庭が優しくなれば、その周囲の人々も優しく接して行くでしょうし、これは時間のかかることですが、私はこの先、何十年も出来るわけではありませんが、人の心を荒ませない人間教育を続けていきたいと思っております。一生です。


‥‥‥●ボランティア活動に携わられたのはいつ頃からなのですか?

 私は5人兄弟の真ん中で育ち、親が言うにはどういうわけか中学生くらいから、社会奉仕に興味があったようなんです。不思議なことに他の兄弟姉妹は誰もそういうことはしておらず、私だけなんですね。大学時代にはずっと肢体不自由児のキャンプにボランティアで参加しておりました。当時は身体の不自由な子どもたちに対して、世の中が閉鎖的でしたから、御家族が苦労していたみたいでした。その御家族に自由な時間を持ってもらいたいというのもあって、子どもたちの心身のケアを学ばせていただきました。遡ってみると私の祖父が武士の家系ということで、幼少時から“義理人情に厚い日本人の美徳”や、“男はこうあらねば…”と教え込まれていた気がいたします。また自分自身が思い入れを持って行動していると、同じ志を持つ方と出会うものなんですね。イエローハット相談役の鍵山秀三郎様の御指導の元、尊敬できる方とのご縁があって、ここまで来れたのだと感謝致しております。


‥‥‥●経営者として世の中に貢献しようというエネルギーの素は?

 当社では毎朝、男性社員全員で6時半頃から、雨の日も風の日も、会社の周辺300m〜500m四方の掃除をさせてもらっていますが、社長は自ら後ろ姿を見せないといけないと思います。全てまず自分がやってみせないと、社員の信頼は得られません。最近は「経営者・春風塾」と称し、経営者になるための“社長教育”もさせてもらっております。社内・外から合わせて11人お預かりしております。まず、「社員・家族を幸せにする」という生きる目的、強い心をしっかりと持ってほしいです。社長になるからには、志を持ってまず短時間睡眠に耐えられる身体を作ることです。8時間寝ているなら、睡眠を5時間にして、3時間は勉強しなければいけないと思います。私が66年生かされてきて、こんな厳しい時代に遭遇するとは思いませんでした。それほど大変な時に、企業として生き残っていかなければならない。とにかく将来が予測できず、我々を含むほとんどの業種、従業員2030人規模の中小企業には本当に想像を絶する厳しさです。世の中が荒んでいて、人間教育が大切なのだと痛感いたしておりますので、お返しの時機到来だと、その様に考えております。


‥‥‥●人間教育の講師として招かれる機会も増えたそうですね。

 はい。ありがたいことです。もちろんプロではありませんから、自分が社員教育をする中で感じたことをお話させていただいております。もし今後機会があれば、小さいお子さんを持つお母さん方に、子育てや躾について話が出来ればと考えております。親はどんなことがあっても、寝る前・出かける前・食事前には絶対に怒ってはいけないと思います。お母さんだって、ご主人が朝、出がけに捨て台詞を吐いて行ったら、その日1日不愉快でしょう?食べる前にご主人に文句を言われたら、食事がまずくなるでしょう?子どもだって同じなんですよね。
 あとは履物を揃えるということ。うちの社員に教えるにしても、3〜5年はかかります。脱いだ靴を揃えることが気づきにつながるんだと、入社時には全員に教えますが、すぐに忘れてしまうんです。急いでいる時、慌てた時…人は本性が出てしまいます。靴を揃えられるようになれば、椅子を机の中に入れるようになる。やがて机の上を、引き出しの中を、きれいに整理整頓するようになる。それがあらゆることへの気づきに繋がり、仕事の能率を上げ、優秀な社員に育っていく。そういう部分についてお話ししてみたいですね。


 
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