経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.61】
 
創業100年をめざし、新たなターニングポイントに賭ける

「愛する千葉の街で、
“きぼーる”に夢と希望をたくす」

 
株式会社精美堂 望月 泰伸 社長に聞く
 
  今年9月、話題の「きぼーる」1階に本店を、そして2階に本社を移した老舗・株式会社精美堂。はんこの専門店の4代目として、千葉の街を愛するひとりの経営者として、第2の創業期を迎えた望月社長にお話をうかがいました。
 

‥‥‥●創業当時のことを教えて下さい。

 大正12年、私の祖父初代勇太郎が、精美堂の名で印章・ゴム印の製造販売を始めました。2代目の伯父勇太郎は、商工会議所の商業部会長をはじめ、対外的なことを一生懸命やった人でした。代目父武志は、その弟で、実務的なことを担当し、兄弟で車の両輪の様にバランスよくやっていたんです。伯父には子どもが無かったので、私は幼い頃から「お前ははんこ屋になるんだ」と洗脳されて育ちました()。だから全く悩まず、すんなりはんこの世界に入りましたね。ただ、伯父と父は売る方専門で、はんこは彫れませんでしたから、やっぱり彫り手や同業の方から「彫れないくせに大きな顔しやがって」と言われたこともあったと思います。そこで、私には「はんこを彫れるようになれ」と、大学を卒業と同時に年間修業にいかされました。今も、彫らせたらすごいですよ!最近は彫る時間もないですが、私が彫っちゃうと時給が高いのと、プレミアで値段がすごく高くなっちゃうから()


‥‥‥●新しくなった本店はカラフルで、イメージ一新ですね。

 千代紙やネイルアート風、キャラクターをあしらった印鑑、指輪や口紅を入れる感覚の印鑑ケースもあります。「あそこに行くと面白いはんこがあるよ」という、明るくショールーム的な店舗にしたかった。パワーストーンの印鑑を陳列した足元には、床に足型があります。そこに立つと石のパワーを感じて、運気が変わるかもしれません()!自然石の印鑑は、色だけでなく効能も選べます。実用性だけじゃなく遊び心いっぱいの、人に見せたくなるはんこばかりです。家族や仲間でお揃いや色違いにしたり、季節やTPOに合わせて、ファッションを着替えるように選ぶのもいいでしょう。もちろんギフトとしても喜ばれると思います。
 その一方で、オーソドックスなものもきちんと揃えています。1本数十万円の高級品、象牙はもちろんマッコウクジラの歯、ロシア産のマンモスの牙、チタンやアルミニウムなど、素材も様々です。本部からのデータにより、簡単に何本も同じ様なはんこを作っているチェーン店や量販店の商品との差別化をはかる意味で、世界中探しても、同じ物が二つと無い唯一無二”のはんこを造るのが専門店としてのプライドであり責務だと考えています。



‥‥‥●今年で創業84年だそうですね。

 あと16年で創業100周年です。それまでは自分が4代目として頑張ろうと思いますが、今52才なので、100周年を見届けて現役を引退したいですね。息子は現在大学年生で、卒業したら年は修業してもらうつもりです。私も学校を卒業して3年間、日本の第一人者である東京の先生に弟子入りし、礼儀作法から勉強しました。その間、東京で毎月開かれる技術講習会や、全国大会のコンクールでも1、2位を争いましたが、それが当然、というレベルの場所で学んでましたから、プレッシャーはすごかったです。それからゴム印製造の勉強を1年やって、精美堂へ戻ってきました。ただ息子には、何かはんこ以外でも、彼にとって面白いもの、興味があるものを見つけて帰ってきてほしいと思っているんです。今、はんこの商売は難しい時代です。白い紙に墨で文字を書いて、朱で判を押す、これは日本の文化ですが、印鑑証明もカード化になってしまった今、実印を押す場面も激減しました。パソコンの普及で電子印章が生まれ、名簿の管理もコンピューター化してゴム印のニーズも減ってきましたし、家庭やオフィスでもプリンターが普及し、印刷部門も厳しくなった。そういった時代の流れから見ても、当社にはもう何本か、柱となる事業を模索検討中ですので、息子に新しい柱を是非立ててもらいたいと考えています。



‥‥‥●青年部会長時代のエピソードをお聞かせ下さい

 28才で青年部に入り、42才で会長になることになったのですが、奇しくもその年の誕生日、当時社長だった父が脳硬塞で倒れたんです。私は理事を緊急に集めて「実は大変なことになった、申し訳ないけど会長から降ろしてくれ」と腹を割って打ち明けました。そしたら皆協力してくれて、何とか2年間やり遂げられた。それが私の財産ですね。青年部って、各々が親方じゃないですか。1つの事業を進めるのにも、100人いれば100の見方があると教えられた。しかも異業種だから利害関係が無い。一生涯の友達と言える相手が何人も出来て、青年部にはすごく思い入れが強いし、自分の原点だとも思います。青年部担当であった、金綱副会頭や、故玉置会頭には大変お世話になり、ご指導いただきましたが、「望月君、人生の中で45才から55才の10年間は特別に素晴しい10年間なんだよ。その素晴しい10年間を迎える為に、青年部の君達は、よく勉強して自分を磨きなさい。」という故玉置会頭のお言葉が忘れられません。
 「きぼーる」を文字どおり千葉の活性化の起爆剤として、千葉の夢と希望がぎっしり詰まった「元気玉」として活用し、我々が頑張って、この千葉を元気で素晴しい街にして、胸を張って子どもや孫にこの街を伝えていきたいし、俺達の親父が、お爺ちゃんがよくしたんだと将来思ってもらいたい。街の流れを変えるのは私たちです。それには会議所の役目も非常に大切だと思いますので、ぜひ一緒に頑張っていきましょうよ。



‥‥‥●今の時代にはんこという商品を扱う難しさはありますか?

 就職、結婚、契約…人生の節目の、重要な場面には必ずはんこの存在があります。でも今の若い世代は、はんこなんてどうでもいいと思っているかもしれません。こだわりのあるお客様も減ってきましたね。だからこそ意外性のある商品を揃えて、お店もどんどん変えていかないといけません。どんな商品も、ネットで安いところを探して簡単に手に入る時代ですが、安さだけで売れば材料も悪くなるし、彫りもいい加減になる。うちのはんこは割高かもしれないけど、吟味した材料で、一流の職人がお客様の為に一生懸命彫っているんです。それがうちの生業であり、商いです。胸を張ってお客様にお渡しできるはんこ、そういう商売しかしたくない。 正直、私は運気なんてはんこでどうこうできるものじゃないと思っています。でも、はんこを使う人・はんこを造る人の心持ちの違いはある。正しい良いはんこを持ち・使い、正直な正しい生き方、商売をしたいという思いが、家庭に福を呼び、社業を伸ばすのではないかと思います。会社なんて今じゃゼロ円で設立できるようになったし、はんこにお金をかける必要なんてない、そういう考え方でも成功する人はいるでしょう。それでも「精美堂ではんこを作ったら業績も上がり、運気もアップしたよ!」とお言葉をかけてもらう時は、本当に嬉しいし、幸せですね。


‥‥‥●社員の皆さんへの思いをお聞かせ下さい。

 社長に就任して、7年になります。おこがましい言い方だけど、皆で同じ目標に向かっていくための道をつくり、元気に気持ちよく、その道を歩んでもらうかが私の務めだと思っています。全てを任せられる社員たちに恵まれたことは本当に幸せで、ありがたいこと。それは先代たちが育ててきてくれた人材であり、今度は私がそういう人材を現在育てています。今が第2の創業のとき、過渡期でありターニングポイントですからね。
 自分は本当にツイてるんです。たまたま初代がこの土地の地権者でいてくれたから、今、この場所にお店が出せるわけで、代々の社長にも感謝している。歴代の社員たちは精美堂にとって宝であり功労者です。バブル崩壊後の、ひどい時代に社長をやっちゃったなという思いもありましたが、同時に、私じゃなきゃ出来なかったと思っていたい。いまだに試行錯誤で、常にもがいている状態ですが、社員の皆さんがリタイヤした時には、「この会社で働いて、良かったな、幸せだった。」と思ってもらえるような会社に是非していきたいと思っています。


 
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