経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.63】
 
小さなレストランから食文化の楽しさをお届けする

インドの食文化を通じて、
  豊かなひとときをお客様へ

 
有限会社シタァール 増田 泰観 社長に聞く
 
  インドの食文化を通して、幸福で豊かな食生活のお役に立ちたい……行列の絶えない、千葉で最初のインド料理店として26年。近年はインド産マンゴーなどの輸入にも力を入れているという増田泰観社長にお話をうかがいました。
 

‥‥‥●社長が飲食業を志したきっかけは?

 私はもともと料理を食べる事も作る事も好きで、コック志望でした。東京の大学に在学中に「アジャンタ」という老舗インド料理店でアルバイトを3年、大学卒業後に社員として4年、修業を積みました。当時は不景気でも、飲食業が伸びていた時代。世の中がどんどん忙しくなる中で、外食は友人や家族と楽しむ、より手軽なレジャーとして定着していくだろうと考えました。また私は幼い頃からカレーが大好きで、よく母が作ってくれていました。母もカレーが好きで、戦後の食糧難の時、復員してきた母の兄が闇市でカレー粉を買ってきて、野菜と小麦粉でカレーを作ってくれたそうです。世の中にこんなおいしいものがあるのかと思った、という思い出話が今も心に残っています。
 その頃、私は検見川にいた親戚の近所に下宿していて、その親戚が、現在レストランと事務所のあるこの土地の所有者でした。私が27才の時に偶然テナントが1つ空いて「ここで独立してみないか」と薦めて下さったんです。当時、インド料理専門店は千葉で初めてだったと思います。いずれは故郷の熊本で、本場のインド料理を食べてもらうのが夢で、熊本に帰る前に勉強するつもりでオープンしました。しかし実際にやってみると腰掛け的な気持ちでは絶対上手くいかない、もうこの地に骨を埋める気持ちでやらないと成功しない、と悟りました。妻と2人、今の半分の広さ、約9坪でのスタートでした。



‥‥‥●レストランではインドのどの地方の味が中心ですか?

 インド南部ではスープ状の辛いカレーです。一方、北部はバターやクリームを入れたマイルドなカレーです。私が「アジャンタ」で修業したのは南のカレーですが、南インドは菜食主義者が多く、現代の日本人には肉や魚が入る方が人気ですから、メニューは北のカレーの比率が2/3くらいです。作り方のベースは現地の伝統を守りますが、使うスパイスの微妙なバランス、材料の配合などが現地のままだと、薄味に慣れた日本人には合わず、3日も食べ続けると胃がもたれてしまうので、素材や配合率などを調節して、毎日食べられる味付けにしています。もちろん私も毎日食べますし、日に2回来るお客様もいますよ。


‥‥‥●社員教育はどういった形で行っていますか?

 社のポリシーに「国際社会で貢献していくこと」「世界平和に協力していくこと」があります。「アジャンタ」ではインド人の他に欧米人からアジア人まであらゆる国の人が働き、お互い歩み寄って上手くやっていたし、当店もインド人の他にネパール人、スリランカ人など様々な国の方が働いていたことがあります。従業員にはインターナショナルな考え方が必要です。現在は勤続10年のインド人コックが2名おりますが、インドにはヒンドゥー教の他にイスラム教、シーク教、仏教などがあり、宗教によって生活の規範や食べ物、考え方も違います。相手のバックグラウンドを知り、接し方を変えることも重要ですね。
 社員教育は主に家内が担当し、2年間勤務した社員はインドへ研修に連れていきます。私か妻が同行し、ホームステイなどもとり入れて現地の方と交流をはかり、料理だけでなく文化面も勉強してもらいます。私が初めてインドに行った31才の時、現地の人と同じように手で食べてみて、これがインドの味だと実感しました。文化というのは、現地の人々の中で同じことをやってみて、共感して初めて触れ合えるものなんですね。だから社員にも手で食べさせ、民族衣装も着せます。すると帰国後、自信を持って料理を薦められるようになりますね。



‥‥‥●常に行列が絶えない人気の秘密は?

 お客様に受け入れていただいているとしたら、食の楽しみの部分を経営者ともども追求している点でしょうか。お客様にその部分を味わい楽しんでいただくという考えをスタッフたちも理解し、一生懸命、体現してくれています。
 当社は平成9年より、幕張メッセのフーデックスジャパンに毎年出店しています。これはアジアで一番大きな国際見本市で、インドパビリオンの一画を借りて、インド産マンゴーをご紹介しています。現在は輸入事業が当社の売上げの7割近くを占めますが、事業の核はあくまでもレストランで、輸入はお店に相乗効果を与える周辺事業です。お店にはインドの食文化に関する情報や、音楽やスタッフの衣装、インテリアといったエッセンスをぎゅうっと詰め込み、お客様が食事をするたびに別世界を味わって、楽しんでいただきたいですね。



‥‥‥●輸入事業について詳しく教えて下さい。

 マンゴーは、インドの食文化の中で代表的な存在です。以前は生のマンゴーの輸入が許可されず、ピューレ状に加工した缶詰をジュースなどに使用するだけでした。当社で扱う加工品は、指定農場のみから集めたマンゴーを加工し、保存料も加えていません。ユーレプギャップ(欧州小売業組合適正農業規範)にそった農法で、農薬や堆肥の使用も人体に影響が少ないように量、種類、散布時期を限り、道具の保管や廃棄の仕方、季節労働者の生活環境まで厳しく決まっているので、品質と安全性には自信があります。今年からは本格的に生のマンゴーの輸入も許可されました。これまで数年間、インド中央政府の農産物及び農産加工品販売局と情報交換を重ね、インドにある私どもの指定農園から、アルフォンソとケシャールという2種のマンゴーを限定数量輸入し、インターネットでご予約いただいたお客様に宅配便でお届けするシステム「ガーデン・トゥ・テーブル」を始めました。国内産の高級マンゴーに比べてもお求め安い価格で、味もおいしいので大変ご好評をいただいています。
 また3年前からインドの野生の蜂蜜も輸入しています。インドでは養蜂が国家的な仕事なのですが、ハニーハンターと呼ばれる少数部族が、紀元前1万5千年頃から野生の蜂蜜を取っていました。夜間に高い木に昇って採取する、昔ながらの大変危険な方法です。森林保護や砂漠化の防止、少数民族保護の一環として、国連の協力でインド政府が昆虫学者を送り込み、昼間、安全な器具を使って取る方法に変え、日本では私どもが独占販売権を取ったので、今年から特に力を入れています。企業としての存在価値は、やはり社会のお役に立つこと。レストラン部門と輸入部門で私たちなりにエコロジーに参加し、少しずつ協力することで、こんな小さな会社でも国際社会へ貢献できるんですね。


‥‥‥●将来にむけてのさらなるビジョンはありますか?

 やはり食文化に携わることで、ひとりの商人として生き甲斐を持っていくことが、一番の夢ですね。レストラン業としては少子化や労働力人口の不足、お客様も高齢化していく中で、インド料理をどうご提供していくか。例えばカレーを冷凍で販売する、あるいは高齢になって来店出来ないお客様にはカレーの宅配システムも検討し、より身近なレクリエーションという形で展開していくつもりです。今後も小さくとも、ひとつの店を一生懸命守って、お客様がリフレッシュできるような店づくりを続けたいと思います。輸入業務の方はインドと日本の将来に渡ってのおつきあいを考え、輸入品目も今後増えていくでしょうが、食に関するものから遠ざからずに、私がインドに対して持っている知識や人間関係から日本の食生活に役立つものを選び、販売していきたいですね。


 
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