経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.66】
 
自転車に乗るという楽しさを伝えたい

「皆で一緒に、健康に…
   
走ろう!遊ぼう!

 
株式会社TRY360 田野 仁志 社長に聞く
 
  一見、敷き居が高く感じられる、スポーツとしての自転車。しかし実際には、限りなくシンプルで、懐の大きな楽しさを秘めています。スポーツサイクル専門店「サイクルハウスGIRO(ジロ)」の田野仁志社長にお話をうかがいました。
 

‥‥‥●創業当時のお話をお聞かせ下さい。

 
私は船橋在住で、自転車通勤を前提に自宅から半径20kmの円を描いて、その中で候補地を探し、千葉に店を出しました。今も、船橋から自転車で通っています。天気が悪い日は他の交通手段を取る、と思って始めれば気楽ですよ。何が何でも自転車で、では冬なんか嫌になることもありますし(笑)。私自身はせいぜい高校の通学に乗っていた程度で、自転車競技の経験はありません。今は皆さんと一緒に走ってはいますが、以前は普通にサラリーマンをしていました。開業にあたり、何か身体を動かすことをやりたくて、自転車がいいかなと考えたんです。店の方は1986年からですが、法人化したのは200612月です。社名はイベントの名前に由来しています。


‥‥‥●イベントについて教えて下さい。

 開店して3〜4年たった頃、お客様から「自転車で1日どこまで行けるかやってみよう」と提案があったんです。日本橋から直江津まで走るという有名なイベントがあるので、うちは太平洋から日本海まで走ってみようかと。その距離が約360kmで、「TRY360」と銘打ったのが始まりです。毎年7月に開催し、今17年目。多い年には50名近く参加され、平均年齢は40代前半。昭和20年生まれの方もいます。途中まで電車に乗ってきて合流することも出来ますし、それぞれが目標をクリアできるよう、それぞれの形で楽しもうよ、というイベントですね。午前2時頃に出発し、グループごとのペースで約15時間かけて到着します。現地では皆でおいしいものを食べたり、温泉に入ったりして、「輪行」と言うのですが、自転車を分解して袋に入れて夜行列車で帰ってきます。車輪を外すのは慣れれば1分もかからず、どなたでも簡単に出来ますよ。あきらめずに走っていれば、いつか目標地点にたどり着けるという精神を伝えていきたい…そんな意味で、社名にふさわしいと考えました。
 毎年、3〜11月の土日にトレーニングを行っていて、4050代、リタイア後、女性やご夫婦で走る方も増えてきました。主に房総半島や東京湾沿い、花見川沿いのサイクリングロードを走ります。競技志向の方だけでなく、例えば休日に自転車で2〜3時間走って、おいしいランチを食べに行く企画や、「輪行グルメツーリング」も人気です。まずは安全に、そして楽しく、というノウハウの蓄積を心がけています。



‥‥‥●普通の自転車は扱わないのですか?

 
創業当初はシティサイクル、いわゆるママチャリも扱っていましたが、徐々に専門化していきました。同じ自転車でも、目的が違うんです。特にロードレーサーは、あくまで部屋の中に入れる自転車。外で雨ざらしにして、駅前に停めておくようなものではありません。鍵をかけても車輪などを外されて持っていかれます。例えば何十万円もするゴルフクラブを駅前に置いて出かけませんよね?(笑)それと同様、予算が許すなら出来るだけいいものを買っていただき、大事に長く乗ってほしい。そのためのノウハウはアドバイスしますし、一緒に遊びましょうというスタンスで、いつでもお店に来ていただきたいんです。
 スポーツとしてやる以上ヘルメットなど安全対策も必要ですし、パンクも自分で直せるよう、セミナーを開いて実演指導していますが、用品類に5〜6万円、車体に1525万円がオーソドックスな価格でしょうか。5060万円も出せば、世界のトップレベルの選手たちと同じものを使うことが出来ます。オートバイや車では考えられない値段ですよね。実際には、こうでなければいけないということはなくて、乗ってみて楽しんでいただけるなら、揃える用具や乗り方はそれぞれでいい。大事に乗れば1015年、距離にして10kmくらいは乗れますよ。乗り換え時の下取りはやっていませんが、中古製品はオークション代行を承っています。小型車を買う感覚に似ていますが、車と違い、乗ったぶんだけ身体に帰ってきますし、さらにエコロジーでもあるわけです。


‥‥‥●スポーツとしてのサイクリングとは?またその効用は?

 自転車は、ただサドルにまたがってハンドルを握り、ペダルに足を置けばもうフォームは決まってしまうシンプルなスポーツ。消費カロリーの大きな有酸素運動であり、内臓が大きく動かないので身体へのダメージも少ない。例えば全く身体を動かしていない方がいきなりジョギングを始めるのは難しいものですが、自転車の場合は惰性で走って、休める部分が結構あるんですね。さらに体重がお尻・足・上体に分散するので、長い距離を疲れずに走れます。
 半年も続けると身体が変わってきますよ。ウエストが細くなったり、洋服が1サイズ落ちたり。極端な例ですが、かつて体重100kg以上あった青年が、やせるために自転車を始めたら、だんだん面白くなって1日50km以上走るようになりました。彼はすごく瞬発力があって短距離に向いていました。その後20kg程やせて、昨年は国体に出場しています。そんな方もいるんですよ。
 ロードレースなどの自転車競技は筋持久力がつき、筋繊維の中の脂肪が取れてスラッとした体型になっていきます。一方、競輪などは最大限のパワーを一瞬に発揮するので、筋繊維を太くするトレーニングをします。それでも回転運動ですから、競輪も含めた自転車競技選手は4050代まで長く活躍できます。
 最初はすごく敷き居が高く感じると思いますが、自転車って特別な技術が必要な乗り物ではないんです。特に今の若い世代は皆さんバランスがいいので、どなたでもスポーツサイクルに問題なく乗れると思います。自転車は、自分の力で遠くに行ける、最高の乗り物ですよ。
 そして中高年の方。私も含め、誰でもいずれ老化していきます。でも、やはり皆いつまでも現役でいたい。だから何とか身体を動かさなきゃと思っても、なかなか出来ないのが実状だと思います。その受け皿として、自転車は最適だと思いますね。ゴルフなどのスポーツは、そのためのフィールドに行かないと遊べませんが、家を出た途端に楽しめるのが自転車。「気が向いたからちょっとあそこまで走ってみよう」でもいいし、仲間がいればなお楽しいものです。


‥‥‥●エコという観点でも自転車は注目されていますね。

 
自転車競技の本場・ヨーロッパのように、自転車文化が根づいている国々と比べると、日本の街は危険な道も多いし、まだまだ自転車に対して優しくないですね。しかし地球環境への負担を考えれば、社会的にも自転車に乗ることが見直されてきています。ラッシュ時の渋滞緩和や二酸化炭素・排ガスの削減に貢献できる自転車通勤には、逆に通勤手当てを出してほしいくらいですね。その一方で、乗る側も無灯火や逆走、歩行者への気づかいなど、マナー面も問われています。もっともっと、人や車と自転車が上手く共存できるような世の中になってほしいですね。自転車という輪が、日本中、世界中に拡がっていってくれればいいし、それに携われるのは非常に意義のある仕事だと思います。


‥‥‥●今後の経営の展望をお聞かせ下さい。

 企業として成長していくためには、小さな1店舗では限界があります。商圏は全国、海外に拡げていきたいと考えています。通信販売のやりとりでも、それほどバーチャルな感じはしません。リアルな対面販売と何ら変わりませんね。実店舗での販売同様、密な関係であることを心がけています。実際、インターネットの拡がりは予想以上で、当社のようなホームページ、最初なんて私が手作りでしたが(笑)、それでも韓国から問い合わせが来てやりとりをさせていただき、海外発送もしていました。視野を広く持っていけばワールドワイドに、かなり大きなビジネスになるチャンスも出てきます。それには専門知識も必要ですし、自分を磨いていかなければならない面もあるでしょう。そういった努力をするにふさわしい仕事と思い、一昨年に法人化しましたが、基本的には買っていただいた方に、いかに楽しんでもらうか。単に“自転車を買う”ということではなく、極端な話、自転車はどうだっていいんですよ。皆で元気になって、遊びましょうというその楽しさがメインです。そのために必要なもの、その楽しみ方をご紹介するのがうちの仕事です。うちのスタッフも皆、実際に自転車で走っていますし、私自身も通勤で年間1万kmくらいの走行をしていますから、お客様にお薦めする商品は自分たちで試しています。実際に使っていいものだけをご紹介し、自転車を通じて、健康に役立つことをご提案していければと思っています。要は、お客様と一緒に遊びたいんですね。一緒に走りましょう、という機会を、これからも多く作りたいと思っています。






 
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