経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.67】
 
味噌という食材を世界へ

お客様の命をつなぐ
   
おいしさを求めて

 
株式会社トライ 田所 史之社長に聞く
 
  単なるらーめん店ではなく、健康食としての味噌を主役とした専門店。それが、株式会社トライがプロデュースする「味噌屋」ブランド。味噌という食材の持つ素晴らしさを世界へ発信する田所史之社長にお話をうかがいました。
 

‥‥‥●創業当時のお話をお聞かせ下さい。

 もともとはディスカウントショップをやりたくて、大学を2年で中退し独立資金を貯めようと始めたのが、らーめん屋でした。今から24年前、私が20才の時です。現在も千葉市を拠点にご活躍されているチェーン店で勉強をさせて頂きました。運良く21歳でらーめん屋で独立出来ましたが、私の不徳の致す所で35才で一度倒産をしまして多くの方々にご迷惑をお掛けし、またお世話をいただきました。それから5年間サラリーマンとして働かせて頂き、今の会社を創業しました。再チャレンジをさせていただいております。私は実家が味噌屋だったので、子どもの頃からずっと味噌が近くにあって、本当はらーめんよりも、味噌料理専門店をやりたかったのですが、創業1店舗目の小倉台の店舗ではらーめん店の居抜き店舗だった為、改装資金も無く、またちょうど激安らーめんの大手チェーン店が台頭してきた頃でした。値段で勝負したら絶対に勝てません。切り口勝負で、結果的に小倉台は、全国各地の味噌を使った味噌らーめん店になりました。
 今年4月20日、最終的には味噌料理専門店を目指し居酒屋系の店舗を船橋にオープンし、直営店は3店舗になりました。また7月には、4軒目の直営店が武石インターそばにオープンします。ここでは全国の味噌を約20種類程集めて、味噌の量り売りも予定しています。加盟店は11店舗で、「味噌屋庄助」「麺場 田所商店」はじめ、メニューは味噌らーめん中心です。


‥‥‥●らーめんにはかなりユニークなトッピングがあるそうですね。

 当社のらーめん店のメニューには、使う味噌の産地の名産が入っています。東京・高島平の店は、江戸前味噌らーめんの専門店で、らーめんに江戸の名産であったアサリと海苔が入っています。北海道の味噌にはポテトを揚げたものを、仙台の味噌では笹かまぼこを入れていました。名古屋の八丁味噌なら海老フライ。こういったアイデアは、遊びの部分ですね。人間は目から入る情報が80%だそうですし、味噌の色だけでは一見、どんなものを使ってもあまり差が出ません。特徴を出すためにも、ご当地の食材を使ったメニューは、視覚的な効果も大きいです。



‥‥‥●味噌は健康食なのですか?

 
味噌を食べたからって150才まで生きられるわけじゃありませんが(笑)、何故日本人が長寿なのかという鍵も、味噌に含まれるコウジ菌によるところが大きいのではないかと私は思います。味噌汁を毎日飲む人と飲まない人とでは、胃ガンにかかる率に50%の差があるというデータもあるんです。日本人は昔から発酵食を食べてきました。もちろん塩分の摂りすぎには注意しなければいけませんが、塩分も無ければ人間は生きていけませんから、当社では「医者に金を払うなら味噌屋に払え」とうたっています(笑)。かつてチェルノブイリ原子力発電所の事故の際、日本から何十トンもの味噌がロシアへ送られました。味噌の中に含まれるコウジ菌には、腸をきれいにする解毒作用があるんですね。以来、ヨーロッパ各国へ大量の味噌が輸出されるようになりました。特にベルギーでは輸入の増加率が300%だったそうです。


‥‥‥●らーめん業界は競争が厳しいとよく聞きますが。

 らーめんには時代ごとに様々な流行があり、実は味噌らーめんのブームは1213年前に終わっています。それに代わってとんこつ味が台頭し、今ではとんこつ醤油味がすっかり定着していますが、私はいずれまた味噌らーめんの時代が巡ってくると考えています。らーめんに限らず、食品業界は日々移り変わっていきます。今の“時流”が今後10年続くか、と言えばそんな保証はない。そう考えた時に、味噌を使ってお客様に喜んでいただける商売でいられるか、いかに継続していくか。それが当社の課題です。原材料の高騰は、まだまだこれから激しくなっていくと思います。当社では不本意ではありますが、今年4月から各店舗で値上げをさせていただきました。しかしお客様第一主義を掲げている以上、単なる値上げでは申し訳ないので、店舗によっては値上げ前に改装をし、より洗練された空間で召し上がっていただけるようにしました。


‥‥‥●海外への出店予定もあるそうですね。

   今年5月、ご縁があってブラジル サンパウロに出店します。ブラジルには日系人が150万人住んでいて、ちょうど日本からの移民100周年を迎えるそうです。1世の皆さんにはもう一度、懐かしい日本の味噌を味わってほしいですし、2世、3世の方々は初めての味との出会いとなるでしょう。当初は祭事的に2ヶ月程度の予定でしたが、最終的には店舗を構え継続店として、味噌だけでなく醤油味なども含めて展開することになりました。
 一般的に外国人の方にとって、我々からは考えられない程、味噌という食べ物に抵抗があるようです。和食の調味料と言えば、海外では醤油がずいぶん普及しましたが、味噌はまだまだ受け入れられていないのが現状です。単体で難しいなら加工品として、健康食品として広めていく会社になりたいですね。これまでに無かった活用、例えば味噌味のスパゲッティがあってもいいわけです。


‥‥‥●味噌料理に加え、らーめんを選んだ理由は?

 
らーめんやカレーが国民的に愛されているのには理由があって、実は日本人は欧米人に比べて唾液の分泌量が少ないそうです。日本には梅雨の時期が有るからだと言われています。近年、食パンなどもしっとりした触感が主流になってきましたが、水分の少ない食べ物は日本人の口には合わないんですね。米を使った料理も、海外ではパラパラしたものが中心で、欧米人が日本のご飯を食べるとベチャベチャでおいしくないと言う。そういった意味で、らーめんは日本人の身体に合った食べ物なわけです。
   ただあくまでも当社がこだわっていきたいのは味噌という食材。らーめんは、その“とっかかり”のひとつです。現在は、社内で味噌の製造も始めています。出来るだけ原料にこだわり、無添加に近づけるよう心がけていますね。また味噌の加工品として、千葉産のピーナツバターや房総ハチミツを使った味噌ジャムを製造しています。朝がパン食ならば、味噌汁の代わりにパンにつけて食べられればと考案しました。いずれは各店舗などに並べたいと思っています。他にも餃子は千葉県内の工場で作り、中に入れる豚肉も千葉県産にするなど、出来るだけ地産地消に近づけています。将来的には味噌を粉末状にしたり、カプセルに入れたりと、サプリメントのような商品を開発したいですね。製造でも販売でも、味噌を通して世の中に貢献していく会社でありたいと思っています。
 一方で、単館系ではハリウッド以外の、ヨーロッパやアジアの映画なども上映されます。その中にはあまり宣伝費をかけず地味だけれど、大変芸術的な作品や、マニアックな作品もあります。そのような作品は、地方都市ではなかなか厳しいのですが、都内などでは根強いファンが少なくありません。



‥‥‥●今年2月、経営革新計画が承認されましたが。

 
当社では、味噌を広めていくために「味噌は日本人の宝物」というスローガンを使っています。フランチャイズも含め、従業員にも理解してもらう必要がありますが、なかなか彼らの研修場所が無かった。武石の新しい店にはそのためのスペースを併設し、モデル店舗としてオープンします。今回、そういった取り組みを認めていただけたことはうれしいですね。武石の物件に関してはかなり有利な条件で、低金利での融資が実現しましたので、店舗をオール電化にすることが出来ました。飲食店の厨房内は40℃を越えますから、熱源が電気になることでかなり従業員の負担も軽くなると思います。ただイメージ的に、お客様の目に見える部分もありますし、研修としても使うので、直接炎が見えるガス台もいくつか作りました。一般家庭では急速にオール電化住宅が普及し、地球環境や温暖化を憂慮する流れはこれからどんどん大きくなるはずなので、飲食店もいずれ例外ではなくなっていくでしょう。ならば早めにシフトしてもいいかな、と考えました。



‥‥‥●社員教育で心がけていることは?

  単純ですが、まず何のために商売をやるのか。仕事をするのかということ。お客様あっての商売、売上げを上げればいいのではなく、いかにお客様に喜ばれるお店を作っていくか。例えば昼食にらーめんを食べて、夕食まで何も食べなければ、その間の命をつないでいるのは、お昼に食べたらーめんです。一時的にですが、お客様の命をお預かりしているんですね。食べたものに何か混入していれば、その人は命を落とすかもしれない。それだけ大変な仕事なんだと、社員には繰り返し話しています。
 確かに飲食店ですから、まずは味が第一ですが、それだけではありません。やはり人(従業員)とモノ(商品)と空間(店舗)が大事です。1,000円の料理をお出しした時に、いかに「これで1,000円は安いなぁ」と思って食べていただけるか。あとは今の時代の飲食業で言えば、切り口勝負だと思います。経営者としては足るを知ること、欲を消し、されど欲を持ち、それを中和していくことを忘れずに、働くということ、仕事をするということに関して、夢と使命感を持っていたい。味噌というものを世に広めて、少しでもお客様に健康になってもらいたい、そのために頑張っているという思いに、だんだんとシフトしてきた自分がいますね。ご縁があってお目にかかる方、仕事の中で携わっていただく方々に、弊社と出会って良かった、と思って頂ける企業になりたいと考えております。





 
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