経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.69】
 


専門書店としての使命を抱いて50

  「医療の一隅を
   照らす存在でありたい」

 
株式会社志学書店 菊田高利社長に聞く
 
  明治時代より千葉県内の医学の中心地だった亥鼻。かつて医療関係の業者や、患者を見舞う者のための旅館などが軒を連ねた地で、今年創業50周年を迎える株式会社志学書店の菊田高利社長にお話をうかがいました。
 

‥‥‥●創業当時のお話をお聞かせ下さい。

  当社は昭和34年7月1日に創業し、ちょうど今年で50周年です。母体となったのは東京・本郷にあった医歯薬出版株式会社で、この亥鼻にもともとあった日吉堂という書店の閉店後、初代社長の今田が志学書店を創業させました。
 私は宮城の気仙沼出身で、大学時代は神田・神保町の医学書を扱う書店で働いていたんです。卒業後、横浜で貿易関係の会社に4年程勤務したのですが、その業務があまりにも多忙で、行き詰まっていました。そんな時にちょうど知人から、医学書を扱う千葉の書店で、経験のある人材を探しているというお声がかかったんです。それで昭和39年9月に入社いたしました。
 この周辺は、当時とあまり変わりません。ただ今と違ったのは旅館や商店がもっとたくさんあって、人通りも、学生さんの数も多く、活気がありましたね。亥鼻は緑が豊かで、私はたった4050年しか住んでいませんが、とても好きです。高台で空気がよく、昔は大学に水道塔があって、そのおいしい水を飲んでいたせいでしょうか、このあたりは長生きの方が多いんですよ。


‥‥‥●一般書店と専門書店とでは業務にも違いがありますか?

 専門書店は顧客が限定されていてやりやすい反面、難しさもあります。必然的に、信用を得るためには真面目にやらなくてはいけません。お客様からの絶大な御支持をいただければ、信用が利益を生み、業務として立派に成り立ちます。医書出版の本場は東京本郷ですから、必然的に都内に目を向けることが重要です。そして、医療に携わる皆様に迷惑をお掛けしない商売を続けて行くために、常にある程度の在庫と規模を維持し、知識と情報を持ち続けなければなりません。時には学会などで「若い頃、そちらで本を買ってお世話になりました」と声をかけられることもあります。今は立派に医師や教授になられた姿を見て「ああ長年に渡ってお役に立たせていただいているんだ、いい商売だな」と本当に嬉しく、やり甲斐を感じます。商売人冥利に尽きますね。
 また直接のお客様(医療関係者)でなくても、医書を通じて間接的に、例えば少しでも患者さんが丈夫になられたり、介護する方が病気にスムーズに対応できたりと、一般の方に対してもその一端を担うということで、「医療の一隅を照らす」という言葉を先輩からもらって使っています。医療のホンのはじっこの方でいいから、照らしてあげたい。この言葉は好きですね。



‥‥‥●医療関係者以外の方も無縁ではないんですね。

 栄養、リハビリ、介護、福祉など、健康に生きていくための全てに関係しています。一般の方からも「こういう病気に関する、簡単に書かれた本がありますか」という問合せがあって、それらの本は一般書店さんでも売られていますが、やはり医書専門ということで当社に来て下さいます。それだけの品揃えを確保し、専門書店としての責任を果たしたいですね。医書専門店の中には、一般書と兼ねて営業する場合も多いようです。すると一般書の方が楽に売れますから、それに甘える形になります。当社の場合、一般書はほとんど置きませんが、なぜか「置いてほしい」と頼まれることも多くて(笑)、例えば医書を買う医療関係者が、自分の家族が読みたいと思う一般書を一緒に買うこともありますから、ニーズがないとも言い切れません。大きな病院や医大などでは、施設内の書店で一般書も扱いますし、施設内の業者さんに、当社が一般書や、医書以外の商品を納品することもあるんですよ。


‥‥‥●書店の経営が難しいと言われる時代ですが・・・。

  近年、本だけを売る時代ではなくなってきました。例えば医療系電子辞書といった商品が出てきて、これらは高額ですし、販売方法、アピールの仕方によっては大きな存在になります。その他多彩なメディア、電子ジャーナル等々のん気にして居られない程の情報が襲います。導入時にはスタッフも皆でハウツーを叩きこみ、努力を惜しまずに頑張りました。ただ、当社のスタッフは少々働きすぎですね。この業界には「教科書時期」というものがあって、特に一般書店に比べて教科書のウエートが大きいので、毎年2月末〜4月中はものすごい忙しさです。今のところ誰ひとり事故も起こさず、病気もせずにやってくれて本当にありがたいのですが、まずは仕事があること自体に感謝し、前向きにバランスをとっていかないと、大変な時期だけを背負うことになってしまう。この仕事への誇りを培い、手の空くシーズンにはダイレクトメールを作ってみるなど、販売努力を惜しまず1年1年のサイクルをつないでいくことに、スタッフも協力してくれています。おかげで、全くそういった努力も出来ず、どうしようもなくなって皆で空をあおいでいた、なんてことは一度も経験せずに50周年を迎えられました。それだけ皆が頑張ってくれていたんです。



‥‥‥●社員教育はどのような形で取り組んでいますか?

  当社の売上げの8割は外商ですので、社員はお客様に何でもお答えできなければなりません。社員ひとりひとりが出店するつもりでやってもらわないと外商は務まりませんが、入社には特に資格は必要ありません。皆、入社後に勉強を始め、働きながら覚えていく形です。会議所さんの研修などにも参加させていただきますが、社内のマニュアルは本当に基本的なもので、細かく書かれたものに従っての教育はしていません。社長の私から、あるいは先輩社員から後輩社員へ伝える程度です。
   先日も、繁忙期の後に慰労会と称した食事会を開いた際、「おいしかったです、御馳走様でした」という言葉が自然に出る者と、黙って帰った者とがいました。後日、本人にそれとなく話をしましたが、何かいただいたら、まずは素直な気持ちで「御馳走様」と言えることが大切で、それはコミュニケーションが欲しいからだと伝えました。どんな商売であろうと、心を開いて何でも言えること、そしてありがたいと感じる心を持つこと、いつでもこれに尽きます。それさえ忘れなければ、日常生活でも争いにはなりませんし、ちょっとした心がけですよね。
   私は夜、眠りにつく前には必ず感謝の祈りを自分なりにしています。朝も、自宅が近いので大体一番先に職場に来ますが、始業前にまず、今日もよろしくお願いしますと祈っています。別に特定の宗教の敬虔な信者というわけではありませんが、そういう気持ちを持つことが大事だと思っているんです。


‥‥‥●今後の展望をお聞かせ下さい。

   間接とは言え医療関係業務に携わることは、言葉に表せない重大使命と責任を感じております。これから医療を志す方々も、既に医療に従事なさっている方々、そして医の恩恵に浴している方々にも、出来るだけ多くの情報を適確に提供することが専門店の使命と心得ています。
   その為に我が社でも、人の和を維持し、感謝の気持ちを失わず、努力し、知識の意欲を持ち続けたいと誓っております。
 そして近い将来、何らかの形で医療業界へのささやかな貢献の出来ることを夢見ておるところです。
 私は4代目にあたりますが、初代社長はあらゆることにあてはまる「天地人(天の時、地の利、人の和)」という言葉を大事にしていました。特に社訓として掲げてはいませんが、私もこの言葉はよく使っています。お陰様で経営的に大きなダウンもなくやってこられました。業界ナンバー1とはまだまだ言えませんが、何物にも替えがたい信用をいただいていると実感しています。
 医書に限らず、先程お話した電子辞書以外にも、ビデオやDVDなどの映像ソフト、またソフトのついた洋書なども多くなって、近年は電子ジャーナルというものも出てきました。時代とともにメディアの形が変わっても、医療にまつわるものには何でも取り組んで、医療の一隅を照らし続けていきたいですね。

 
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