経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.74】
 


産業機械、クレーンからロケットまで

つねにチャレンジし続ける町工場
  

   

 
有限会社ヤマナカ重機 吉澤 勇社長に聞く
 
  クレーン、鉄道用特殊車両など建設・産業用重機で他社の追随を許さない技術とノウハウを誇る(有)ヤマナカ重機。来年5月の新工場移転・操業開始を控え、新たな事業の準備も着々と進み、新たな人材確保にも積極的に取り組んでいます。幅広い分野でのノウハウが武器という吉澤社長に、これまでの同社の歩みと新工場移転後の期待などをうかがいました。
 

‥‥‥●御社の紹介からお願いします。

  当社では、製缶(製造)・組立工場を有し産業機械、クレーンをはじめ、鉄道用の特殊車両や地盤改良機、パワーショベルなどのバケット(掘削する部分)など、重量10トン、20トンクラスの大型機械を専門に製造しています。
   私はもともと、東京の総合商社・株式会社ヤマナカ(本社東京都墨田区、山中茂樹社長)の製造部門に長く勤めていました。ヤマナカは、明治23年創業の老舗機械メーカーだったのですが、平成10年に製造部門を廃し、販売代理店・商社として再スタートしました。その後再び製造部門の必要性に迫られ、平成14年に同社から独立する形で、この会社を設立しました。ヤマナカとは資本的には別会社となりますが、互いに協力関係にありヤマナカが営業面を、当社が製造全般を担当しています。




‥‥‥●御社の強みとは?

  当社は、町の小さな工場ですが、クレーンや特殊車両など、大きな製造物を製造できる設備と技術を備えていますので、大きくて重いものならこの工場で何でも作れます。規模は小さくても、大手企業並みの仕事ができるというのが、当社の大きな強みといえます。
 鉄道車両のほか、溶鉱炉にたまったスラグをとる機械といったものもつくっています。最近では、実物大のロケットもつくりましたよ。まだ製造部門があったころのヤマナカがH2型ロケットの模型製作に携わっていた関係で、最新のM−X型先端部を当社で製造し、他部品と組合せ、相模市内に展示して有ります。
 とにかく当社のような町工場は、特殊なものをつくれるかどうかが勝負です。ですから、普通の工場ではなかなかできない仕事が回ってきます。重要なのは長年積み重ねてきたノウハウですが、建設や鉄道関係の工法は年々進化していますから、現状に甘えることなく技術向上の努力は常に続けています。




‥‥‥●平成21年に移転を計画されている新工場について教えてください。
    移転の狙いは?

  新工場は、21年2月の竣工を目指して現在、千葉市の土気緑の森工業団地内に建設を進めています。正式名称を「潟с}ナカ千葉工場」といいます。名前の通り、建築主は潟с}ナカですが、実際の操業は当社が中心となります。製造施設には第1、第2工場のほかに500坪ぐらいの小工場があり、別に商品販売部門も備えています。現在の工場よりもはるかに大きな製品を製造できる規模と設備を備えています。
  この新工場移転を機に、新しい分野に挑戦してみようと思っています。一つは、公園などにある防火水槽。大体はコンクリート製ですが、最近、鉄製の防火水槽が開発されて注目を集めています。こうした製品は他の工場では大きすぎて手がつけられません。新工場には、防火水槽のような巨大な製品をつくれるスペースが確保されています。
  もう一つは、リニアモーターカー関連。おそらく20年後ぐらいにはリニア実用化が実現する予定で工事関係の機器製作を見込んで、現在準備を進めています。


‥‥‥●新工場移転に伴い、社員も増員する計画とうかがっていますが・・・。

  新工場での稼働は21年5月を予定していますが、それまでに最低30人の人材を確保したい。当社でも社員の高齢化が目立っており、きちんとした技術とノウハウを持った若い社員の育成が急務です。これまでも、いろいろと募集をかけているのですが、なかなか難しい。ハローワークの紹介で10数人応募がありましたが、入社してもみな1カ月持ちませんでした。



‥‥‥●仕事がきついのが原因ですか?

   作業そのものは教科書(マニュアル)通りにやっていれば、誰でも覚えられます。それよりも、会社が要求するレベルに達していない人が多い。「溶接ができる」というからやらせてみたら、全然ダメ。うわべだけの職人では、意味が無いのです。
  以前、在フィリピンの日本企業で働く現地社員を日本に呼んで、技術講習会を開いたことがありましたが、みな覚えはよかったし、日本人よりやる気がありました。今でもうちの工場には、中国人、ペルー人、イラン人が一人ずつ働いています。みんなまじめですよ。ちなみに、うちは全員きちんと調査したうえで、日本人労働者と同じ条件で雇用しています。




‥‥‥●学生インターンを現在受け入れておられるほか、千葉県で初めてジョブカード(※)の登録者の受け入れ企業となりましたね。

  学生インターンはこれまで5人受け入れました。船橋高等専門学校が独自に実施している日本版ジュアルシステム訓練生たちです。9カ月の期間の内、6カ月間は仕事に関する勉強を学校で行い、残り3カ月は企業で実務研修を行うという制度です。5人のうち、3人は現在も製缶工場などで見習いとして働いてもらっています。
   ジョブカードについては、現在は申込者待ちの状況です。当社に興味がある人がきてくれれば、うちの仕事がどういうものかを理解してもらったうえで、その人にやる気があれば採用するつもりです。年に3人ずつの採用を2〜3年繰り返してみて、1人でも本当にうちで働きたいと思ってくれる人が残ってくれればと思っています。

※ジョブカード制度 厚生労働省の委託事業として全国の商工会議所を窓口に今年4月から始まった人材育成支援策。人材確保が難しい中小企業などが対象。職を求める人が「ジョブカード」に職歴など必要事項を記入し、ハローワークなどを通じて紹介された職場で採用を前提とした短期間の研修を行う。求職者にとっては、希望の職場で経験をつむことができ、受け入れ企業には、雇用期間中の経費などが助成されるほか、即戦力の確保、雇用のミスマッチ解消などのメリットがあるとされる。



‥‥‥●社長が求める人材とは。

   仕事は遅くてもいいから、会社が要求するものをきちんと正確にこなしてくれればそれでいいと思っています。いくら早くても、商品にならないものをつくっては意味がありませんから。
   要は、仕事にやりがいを感じてくれるかどうかです。与えられた仕事を面白いと思ってくれれば、その子は育つと思いますよ。今、研修を受けている学生は、最初は溶接工として訓練しました。3カ月ぐらいやると飽きてくるので、いろいろな部門をやらせています。そうすると会社の仕事がわかってきますし、知識も経験もついてきます。
   我々が若いころは、先輩から盗めとよく言われたものですが、今の子はこちらから機会を与えてやらないと仕事を覚えません。ですから、時間をかけて教えていくしかないのです。



‥‥‥●人材の育成がこれからの課題のようですね。

  一番、難しい課題かもしれません。まず、会社に定着してもらうというのが前提ですから。私などは、町の小さなプレス屋に生まれ、物心つく頃から工場の中で育ってきましたので、初めての職場でいきなり図面を渡されても理解できました。今の大学卒の新人にそういう子はなかなかいません。普通の人は機械油に触れるのは嫌がりますよね、ところが機械工やプレス工は、油の中に手を入れても平気。手を切っても、油に浸せば血が止まるというくらいですから。



‥‥‥●最後に今後の見通しを聞かせてください。

  今の経済の現状を見ると、厳しくなるとは思いますが、当社はおかげさまでJRTT及びJR関係等を中心とした仕事をしており、新たに開通する東北新幹線の八戸〜青森ならびに熊本〜博多間で使用する工事車両などを製作しています。
   来年以降の新工場稼働後は、さきほどの貯水槽、リニア関係の製造が控えていますし、県内では成田空港で地上から飛行機に機内食を運び込む装置の製造なども新工場で予定しています。
 前にもお話しした通り、当社の強みはものづくりのノウハウです。町工場が生き残っていくには、このノウハウの差が勝負となります。現状に満足し、「あるものでいいや」という考えでは会社は絶対に伸びません。ですから、この先もいろいろなものにチャレンジしていきたいと思います。

 
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