経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.77】
 


IT活用で障害者に就労機会を提供

障害者の在宅就業で社会貢献を目指す
 データエントリー会社」

  

   

 
 
株式会社ワークスネット 大槻 博茂社長に聞く
 
  民間企業と社会福祉法人という全国でも例の少ないコラボレーションで生まれたIT企業。データ入力業務を主に障害者の社会進出に手を差し伸べる。昨年10月には、在宅就業支援団体(厚生労働大臣登録認可)としての社会貢献が認められ千葉市産業振興財団主催の「第7回ベンチャー・カップCHIBA」において優秀賞を受賞。今後は企業の障害者雇用率アップの手助けをしたいと話す大槻社長にお話を聞きました。
 

‥‥‥●御社の事業についてご紹介ください。
  
本業はデータ入力です。カーネルシステムズ社(本社・東京都文京区本郷)が開発した情報漏えい防止機能を備えた入力ソフトを導入し、保険会社の契約書やカード会社の申込書などのデータをデータ入力センター(石巻市)の専門オペレータと約80人の在宅オペレータが処理しています。在宅オペレータの約半数は障害者です。



‥‥‥●御社は、障害者の在宅就業支援に力を入れていますね?
   それがこの会社を設立した目的の一つだからです。働きたくても働けない障害者が大勢いるということは、この会社を設立する前から知っていました。
    平成17年縁あってカーネル社で営業支援に携わっていた時に、同社のデータ入力ソフトを知ったのがこの会社をつくるきっかけとなりました。このソフトを使えば大勢の障害者に在宅就業の機会を提供できると考え、社会福祉法人あかね(千葉県船橋市)に提案しカーネル社と合弁で会社を立ち上げたわけです。


‥‥‥●作業はどのような手順で行われているのですか。  
   基本的には、原票(様々な申込書など)をスキャナーで取り込んだ文書のイメージ(画像)を、氏名や住所、電話番号など項目別に分割して、それぞれをインターネットで在宅入力オペレータに送ります。在宅オペレータは、例えば住所だけを打ち込む人、電話番号だけを打ち込む人といった具合に入力項目別に担当が分かれており、各人がそれぞれのイメージを入力しデータ化するわけです。幕張事業所ではこれら分割配信された入力データの結合を始め、入力作業の進捗管理や納品前の品質管理などを行っています。作業対価の精算なども重要な役割です。パートナーの社会福祉法人 あかねでは障害者の作業環境の整備や生活相談、健康相談なども行い、高い作業品質を達成しております。



‥‥‥●使用しているソフトウエアの特徴は?
   データ入力ソフトは、正式には「イメージ分割/分散型データ入力ソフト」といい、さきほどお話ししたように、スキャナーで読み込んだイメージを、項目ごとに分割するところに大きな特徴があります。元のデータは契約書や申込書など個人情報の塊のようなものですが、分割することにより各項目はただの文字や数字の羅列でしかなくなります。入力する人は自分が入力しているデータが何のデータで誰のものであるのかもわかりません。つまり、このソフトウエアは、個人情報の漏えい防止というセキュリティの面でも優れているわけです。
   また、細分化された項目のうち電話番号や、生年月日などのような数字項目だけを集めて入力画面を作ることにより、重度の障害者でも数字キーだけで入力作業が出来るといった障害のレベルに応じた作業の提供が可能になっております。さらに、特別なキーボードを使えば口に加えたスティックでも入力作業が出来るわけです。【図1】



‥‥‥●御社は社会福祉法人と合弁で会社を興されましたが、いきさつは?
  この入力ソフトを販売すべく、関東地区の都県庁の社会福祉関係の部局を訪問していたのですが、最後に訪ねた千葉県庁で担当者の方から船橋市の社会福祉法人あかねの阿部貞信理事長が障害者の在宅就業を模索しているとのことで訪問を勧められたのが始まりでした。理事長にお会いしたところ、このソフトに惚れ込んでくれたんです。ただ、購入する予算がない。それでは、カーネル社とあかねとで合弁で会社を作ってはどうかという話になったのです。


‥‥‥●社会福祉法人が民間企業に投資するのは難しいのでは?どのように在宅就業支援団体としての認可を取得され、合弁会社を設立されたのですか。
   もちろん、お国の税金で活動する社会福祉法人が民間企業即ち営利事業へ出資をするということは普通なら認められないことです。しかし、国は障害者の雇用率1.8%を企業に課せていたのですが、なかなか雇用率の改善がはかられませんでした。雇用率をあげる努力は継続しつつも、次善の策として外で働けない障害者に仕事の機会を提供するという発想にいたったわけです。それが当社も厚生労働大臣から登録認可を受けている、その当時(平成18年頃)にできた「在宅就業支援団体」の制度です。
 ところが、在宅就業支援団体の登録には、障害者をフォローできる経験者が社内に必要といった登録要件があります。
   ワークスネットが在宅就業支援団体の登録認可を得るためには登録要件を満たす必要があり、福祉のプロとタイアップすれば、その条件もクリアできると考えました。そこで、再三厚生労働省に出向いた結果、特例として合弁会社の設立が認められました。当社の場合は特例でしたが、私は、もっと当社のような事例を作るべきだと思っています。せっかくこういう制度を作ったのですから、在宅就業支援団体にもっと株式会社の参入があって活性化につながればよいと思います。今現在、登録団体は18団体ありますが、そのうち株式会社は当社と今年できた会社の2社だけです。


‥‥‥●現在の厳しい経済状況下での受注状況はどうですか。

 在宅オペレータをこれ以上増やすとなると、もっと仕事が必要です。現在の経済環境の中、非正規社員の解雇があり正社員の解雇やワークシェアリングが取り沙汰されている中ついに障害者の雇用率も減少傾向が出始めたと報道されています。各企業の方々も苦しい中とは思いますが障害のある方々へのお仕事の提供は引き続きお願いいたします。自治体にも企業にもデータ入力のお仕事はまだまだあります。ワークスネットへご発注いただくことにより障害者の方にお仕事が提供出来、ひいては発注企業はCSR(企業の社会的責任)に寄与することになります。
   ハローワークに求職登録している障害者は5万人を越えるそうです。官公庁自治体や企業のご理解とご協力如何で仕事を待ち望んでおられる障害者に仕事が提供できます。繰り返しになりますが、官公庁自治体や企業のご理解をぜひとも願っております。


‥‥‥●今後の事業展開は、どう考えておられますか。
  データ入力、BPOに加え、障害者の雇用支援事業に注目しています。企業が障害者を雇用する際に、採用された障害者一人ひとりがその会社で仕事ができるよう一括支援するというプランです。あかねの経験豊富なスタッフの協力を得て、その会社のメニューやプログラムに沿った形で教育します。教育終了後の配属の段階では、障害者に適した業務の抽出や就労形態などについて障害者の視点に立った支援をさせて頂きます。
   この事業は、企業に義務付けられた障害者雇用率の達成に貢献できると思います。
   今はまだ各企業への提案活動を始めたばかりですが、今年中に受注を獲得したいと思っています。【図2】





 
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