経  営  談  話  室 
【経営談話室 Vol.81】
 


 採算度外視でもエコへ取り組む
 地域密着の整備工場
 

 「エコ活動は、我が社のDNA」

 
 
 株式会社永光自動車工業 木俣博光社長に聞く
 
  軽自動車から大型車・特殊車まで、あらゆるタイプのクルマ及びニーズに応える技術と設備を擁する地域密着の整備工場。とくに環境への取り組みは20年以上にも及び、「エコ車検」をはじめ同社独自の環境関連サービスを提供しています。昨年、創業者で実父の康一カ・現会長から経営を引き継ぎ新社長に就任した木俣博光社長に、ビジネスと環境に対する考え、厳しい時代の中の生き残り策など、お話をうかがいました。
 

‥‥‥●御社の沿革から教えて下さい。

 私の父で、現在は会長を務める木俣康一郎が1979(昭和54)年に創業しました。会長はもともと千葉県白子の出身ですが、東京の整備工場で修行し、その後独立して当地敷地300坪、社員数名でスタートしました。現在は、4,200坪の敷地に大型車検ライン2基、整備工場、鈑金工場、塗装ブース、架装工場、エコピット、クイックピット、シャシダイナモピットなどの、あらゆる車種、ニーズに対応する施設を擁するまでに成長しました。昨年から私が社長を務めさせていただいております。

‥‥‥●事業の特徴は?

 まず、弊社は大型車に対応するリフトやテスターを完備しておりますので、大型車や特殊車両の整備・修理・車検ができるという点です。もう一つは、架装技術部という部門があり、トラックのシャーシ(車体)と荷箱(ボディ)のアセンブリや修理等を主に行っています。荷箱(ボディ)は、扉が横に開くもの、上に開くもの、スライドするもの、ゲートが付いているものなど、トラックを使用する事業者によりニーズはさまざまです。例えば、コンビニ配送トラックは、冷温両庫併載式といいまして温かい商品と冷たい商品を同時に運送できるボディを使用しています。このようなボディについてのさまざまなニーズには自動車メーカーでは対応できませんので、ボディ専門メーカが対応しています。例えば、冷凍庫であれば、自動車メーカーのシャーシ(車体)、ボディメーカーの保冷用断熱材を組み込んだボディ、電機メーカーの冷凍機をアセンブリして1台の完成車とするわけです。弊社は、もう20年以上前から、この架装技術を整備技術と並ぶ事業の柱としております。県内の整備工場で大型車架装を行える工場は少数です。さらに、弊社の「技術」へのこだわりといいますか執着心は特筆すべきものがあり、「できないことはない」工場を目指し、メカニックたちが日々技術の研鑽に励んでいることも特徴といえます。その甲斐あってか、弊社メカニックは、これまで自動車整備技能競技大会に2回出場し、2回とも入賞させていただいております。弊社整備マネージャは、第9回千葉県大会で優勝し、千葉県代表として全日本大会に出場、全国第三位の成績を修めたメカニックです。つい昨年の第18回千葉県大会では、弊社の若いメカニックが第三位に入賞させていただきました。


‥‥‥●このほかに大きな特徴は?

 弊社の場合、環境には20年以上前から力を入れており、環境省が推進しているエコアクション21も全国で6番目に認証登録を受けています。事業所内での廃棄物の分別や省エネはもとより、お客さま向けにもさまざまな環境関連サービスを展開しています。
なかでも象徴的なのは、「エコ車検」です。いわば「エンジン内部丸洗い」サービスです。エンジンは、走行距離がのびるにしたがい、ガソリンの燃えカスであるカーボンやスラッジなどの不純物が内部に付着・堆積してしまいます。そうしますと不完全燃焼を起こしやすくなり、パワーが出なくなるとともに燃費も悪化し、何よりも排気ガス中の汚染物質排出量が増えてしまうのです。そこで、特別な装置を接続して、エンジン内部を洗浄し、蓄積した汚れを除去して新車に近い状態に戻すのです。パワーが蘇り、燃費も向上しクリーンな排気ガスに戻ります。このほか、エアコンのコンプレッサーオイルを高品質のもの交換することで、冷却効果を高めるとともに燃費を向上させるサービスやタイヤの空気圧を安定させるため窒素ガスを注入するサービスなどがあります。環境にもお財布にもやさしいリサイクル部品(リビルト品、リユース品)の取り扱いも積極的に推進していることも弊社の特徴といえましょう。


‥‥‥●そこまで環境に力を入れられる理由は?

 エコ活動と企業活動とは、時として双方の要請が相反することがあるのも事実です。中小企業にとって売上に直結しない環境保全コストの負担は正直なところツライと感じることもあります。しかし、「エコ推進は、環境とデリケートな関係に立つ自動車に携わる企業としての責任」というのが現会長の持論で、多少なりとも利益があるのであれば、優先的にエコ活動に注力しようというのが弊社のスタンスなのです。従業員も一丸となってエコ活動に取り組んでおりますし、私自身も修士論文で環境権をテーマに選んだこともあり、エコ推進に尽力するのは弊社のDNAと言ってもいいと思います。

‥‥‥●御社の顧客層についてお伺いしますが、法人のほかに一般のお客さんの割合も増
    えているそうですね。


 はい、以前は、法人と一般のお客さまとの比率は7:3でしたが、ここ数年はほぼ半々になっています。お得意さまである運送事業者さまがいま厳しい業況となっていることもありますが、弊社が一般のお客さま向けのサービスに力を入れはじめたことも要因として挙げられます。厳しい時代を支えて下さるのは、地域のお客さまだということをいま改めて痛感しています。弊社も、地域の皆さまのお役に立たせていただけるよう更なる努力をしているところです。

‥‥‥●社長さんは、二代目ですが後を継ぐような形で入社されたのですか?

 私は、実は家業の整備工場とは全く畑違いの仕事をしておりました。クルマ自体は趣味としては好きだったのですが、仕事としては大学で情報処理の教鞭をとっていました。私にとって事業を継承するのは、率直なところ苦渋の決断でしたが、縁あって、20年振りに故郷の千葉に戻り、2年前に弊社に入社しました。ですから、実のところ、お客さまやお取引さまから、ご指導をいただきながら勉強させていただいている毎日です。ただ、私は、これまで弊社とは異なる業界や会社を見てきましたので、自社を客観的にお客さまの視点で見ることができるのは強みだと思っています。
 情報処理が専門だったものですから、社内ネットワークの構築、業務システムの導入、WEBサイト製作などは、すべて自前で行いました。現在では、パソコンは一人に一台という現場で、仕事のスケジュール管理や代車の管理等もグループウエアで行うなど、弊社従業員のITリテラシはかなり高いのではないかと思います(笑)。

‥‥‥●車検整備業界も過当競争の時代ですが、生き残り策として何かお考えはありますか。

 専業工場は、職人の集まりですが、今の時代は職人気質だけでは生き残っていけません。むろん技術は大事ですが、それだけではだめです。例えば、お客さまが車検の依頼先として弊社のような民間整備工場を選ぶ理由の第一位は「車を購入したところだから」、第二位は「近いから」、第三位は「従業員の態度がいいから」となります。このように見ると、「技術」や「料金」は決してお客さまが整備工場を選ぶ理由の一番ではないのです。むしろ、お客さまは「技術はあって当然」「価格はリーズナブルで当然」とお考えなのかもしれません。ですから、これからは高い技術をリーズナブルに提供させていただき、プラス・アルファのサービスで、お客さまに満足やそれを超える感動を与え、信頼していただくことを考えなければなりません。
 プラス・アルファの部分とは、自動車整備業も元来サービス業なのだということを明確に意識することからはじまると考えています。2009年度は、二つの年間目標を立てていますが、その1つが「原点回帰」です。自動車整備業としてではなく、サービス業としての原点に戻りましょうということです。もう一つが「チェンジ」です。時代の要請に即応した経営革新であり組織改革であり、その土台となる意識改革です。従業員一人一人が職人である以前にサービスマンであるということを自覚し、常にお客さまのご満足のために「おもてなし」をしてもらいたい。高度な技術で車を正確かつ迅速に修理することは、顧客満足を得るために絶対に必要なことですが、笑顔で明るくお客さまのおもてなしをすることも、それと同じくらい大切であることを知ってほしいのです。
「職人気質で高度な知識と技術、それを誇りに持っている弊社メカニックたちが、さらにサービス精神やホスピタリティの精神を持てば鬼に金棒」というのが私の考えです。技術者の魂を持ちながら、時代の変化に即応しながらサービスマンとしてのスキルを磨いていけば、必ず地域のお客さまにさらに喜んでいただけるようになり、弊社の専業工場としての生き残りは高い確率で成功すると信じています。

‥‥‥●社長に就任されてからいろいろと改革も進められたようですね。

 この2年間で社内は若返りを図り、社員は30代が中心の元気な若い会社になりました。活気がありますし、みんなで知恵を出し合いながらお客さまに満足や感動していただくためにはどうしたらよいかを、私と一緒に模索し実践してくれています。
 入社してからすぐは労務改革と法務改革に取り組みました。就業規則を抜本的に見直し、完全週休二日制や変形労働時間制を導入すると同時に組織改編にも着手しました。コンプライアンスにも力点を置き、弊社を取り巻く関連法規をすべて洗い出し、遵守状況の確認と適合措置を行いました。また、お客さまの利便性向上を目的として、営業時間を年中無休・朝8時半から夜8時へと大幅に延長しました。施設面では身体障害者専用スペースを備えたお客さま専用駐車場を設置したり、工場内の床面をカラー塗装したり、受付カウンターの改修を行ったりしました。
 昨年は年末大晦日まで洗車無料キャンペーンを実施しました。これは年末になるとスタンドや洗車場で長い行列に並ばざるを得ないお客さまのお役に少しでも立てれば、との思いから実施しました。地域の方々に5,000枚ほどチラシを撒いて広報したところ、多くの方にご来場いただき、そのときのご縁でその後弊社をご利用いただいているお客さまもいらっしゃいます。

‥‥‥●今後特に力を入れていきたい事業は?

 まず「エコ車検」を広めていくことです。この車検は、グリーン購入法の特別調達品目に指定されていますので、自治体にアピールできると考えていますし、今後大企業もグリーン購入法の対象となれば法人の需要も期待できます。ビジネスになるくらいの台数をやっていけたらと期待しています。架装関係も引き続き力を入れていきたいと考えていますが、新しいところでは福祉車両や介護車両の製作・改造・調整といった事業があげられます。この4月に経営革新計画の承認を千葉県知事より受けましたが、その内容としてこの福祉車両・介護車両の事業内容が含まれています。

‥‥‥●福祉車両の製作改造とはどのような事業ですか。

 福祉車両や介護車両には、通常の自動車は運転できない障害のある方が自分で運転できるよう操作系や駆動系を改造したり、車椅子を自動車に積み込むためのリフトを付けたり、といったさまざまな改造があります。また障害の程度も千差万別ですから、その方にとって使いやすい調整や改造も必要となると考えています。
 例えば、最初から車椅子昇降用リフト付の車もメーカーからリリースされていますが、高価ですし、車の買い替えとなると初期費用も小さくはありません。現在お乗りいただいているほぼすべての自動車に、車椅子昇降用リフトを後から装着することは可能ですし、一概には言えませんが大体30〜50万程度で取り付けることができます。
 もちろん、弊社では福祉車両・介護車両のご購入、調整や改造のご相談から、助成金制度や減税制度のご相談についても承れる体制を整えております。私自身も福祉住環境コーディネータ資格を取得し、障害者の方や高齢者の方について勉強しました。

‥‥‥●今後の戦略は?

 よく従業員に言いますのは、「耳は二つ、口は一つ」―お客様の声に謙虚に耳を傾けなさいということです。そうすれば、ニーズが見えてきます。そのニーズにお応えすべく日々新しいサービスを創造することが大切だと考えています。この春から導入したタイヤ保管サービスもその一つです。
 このほか、次世代型自動車への対応は喫緊の重要課題と捉えていますし、既に申しました高齢社会を背景とした福祉介護車両ビジネスの展開、提案型営業の強化などを重要戦略として考えています。
 
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